●2008年のゆらめき in MY HEAD


今夜の放送(http://funky802.com/realeyes/)の特集企画は、年始め恒例DJ&スタッフによる「今年のお奨めアーティスト」。
この番組に参加して以来、歴代、私が年始に挙げてきたのは……

  • 2003年:Theピーズ「サイナラ」
  • 2004年:アナログフィッシュ「のどかないなかのしずかなもぐら」
  • 2005年:miniature tripplanet「ad-balloon」
  • 2006年:VELTPUNCH「killer smile」
  • 2007年:ミドリ「あんたは誰や」


なかなか、なかなかな顔ぶれだと思うのだけれど、今回はギリギリまで悩んだ。
言い訳になるが、このところ、あまり新しいバンドを意識的に探す時間がなかった。
それと、やっぱりピンとくるのが少なかったというのもある。
ということで、もう相当話題になってるけど毛皮のマリーズかなあ、でも増子さんがゲストDJで来てくれたときにも紹介してたしなあ、と決めかねていたのだけれど、ギリギリ、12月30日の深夜に啓示を得た。


それは、長谷川健一というひと。


東京のTBSラジオで放送している「文化系トークラジオLife」という番組があって、その放送で知った。
ほんとは、この番組の話をちゃんと書きたいのだけれど、それはけっこう長くなると思うので、ここでは手短に。
この番組の存在を知ったのは、遅ればせながら去年の11月。
ちょうど、それまでの約1年間の放送内容をまとめた本が出ていて、偶然書店でそれを見つけてから。
以来、ポッドキャスト版のmp3アーカイブを片っ端からダウンロードしては、連日聴き倒している。


で、その番組の12月最後の放送は「文化系大忘年会」と銘打って、2007年に気になった本や音楽、出来事についてレギュラーの出演者たちが語るというものだった。
大阪にいても、インターネット経由のストリーミングで生放送が聴けるのである。


中学生が試験勉強をするみたいにして、一応、仕事をしながら耳はダンボという状態で聴いていたら、なかで佐々木敦氏(http://www.faderbyheadz.com/)が「2007年印象に残った曲」のひとつとして紹介していたのが、この「長谷川健一」というひとだった。
ただ、これ、ストリーミングなので、音源は、曲もBGMもカットされている。
つまり、そこでは音は聴けなかったのだ。
けれど、佐々木氏が持ち前の良い声で真摯に紹介しているさまがやけに心に残った。
どんなひとか。どんな曲か。


ただちにネットで検索すると、ご本人のブログも見つかった。
京都のシンガーらしい。
でも曲は試聴できなかった。
なので次の日、12月31日になってから、マルビルのタワーレコードに行って、『星霜』と『凍る炎』の2枚を手に入れた。


で、これがやっぱり凄かった。


魔都京都の妖剣みたいな声なんて表現してるサイトもあったけれど、まああやしく揺らめくファルセット&倍音ボーカルということではそうかもしれない。
けれど、フェイクなもんじゃない。
聴く人間の、精神の皮の下にすうっと潜り込んでくるような歌。
ミニマムな演奏で彼の声を際だたせているプロデューサー船戸博史(@ふちがみとふなと)氏の卓見&手腕もいい。


さてこの2枚のアルバム。

「ひとつひとつの楽曲があまりに緊張感が高く、録音された90分以上の楽曲を一気に聴くのは、集中力を必要とされると考え、今回、あえてフル・アルバム2枚という形で発表されることとなった」
「結果、彼の実験的な部分が全面に押し出された『星霜』、そしてソングライターとしての才を十二分に堪能できる『凍る炎』という異なるキャラクターのアルバムが完成」
[小田晶房氏/map]http://bridge.shop-pro.jp/?pid=5275092


ということなのだけれど、ステーキ肉の焼き加減にたとえると、ミディアムレアな『凍る炎』と、レアな『星霜』という分け方もできると思う。
いまのところ、個人的にはレアな焼き具合の『星霜』のほうが、より気に入っている。
『星霜』3:『凍る炎』1くらいの割合で聴いてる感じ。


で、番組で推す曲をどれにするかでまた迷った。
「空の色」「やまいとオレンジ」「夜明け前」等々と迷いに迷ったものの、裏声に転じて、また地声に戻り、また裏声にという、その行きつ戻りつの瞬間瞬間の魅力を一義に考えて、「いつかすべてを」にした。
でもほんと、どれもいい。
「緊張感」に包まれて、「集中力」をたぎらせつつ、両方のアルバムに触れてみるべし。


ということで、この一週間、長谷川健一ばかり聴いていた。
今年も春から、得難い出会いにぶち当たった。
呼ばれるというか、アポーツというか、シンクロニシティというか、そういうのはなんとなくあるのかもしれないと思う。


とにかく、生で歌っているところを見たい。見に行かなきゃ。





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星霜  凍る炎