●届かなくても当たり前。それがなにか?


夜は木村カエラ大阪フェスティバルホール 2DAYSの初日。


歌詞が飛んだか、キッカケを忘れたか、段取りを間違う場面などありつつも、相変わらず堂々としたステージ運び。
照明はオープニングからかっ飛ばしていい感じ。
新作『+1』の曲をばりばりやってくれた。
とはいえ、声が少々聞こえづらいのは惜しかった。せっかくの歌だからね。


それはそうと後日、同僚と感想を言い合うなかで気づいたことがあったのでそれを記す。


その同僚はなぜか、カエラのライブをYUKIのライブと比較して語りたがっていた。
そのうえで、YUKIとの違いをやたらと強調していた。
いわく、「YUKIさんは女っぽくて、カエラちゃんは男っぽい」等々。


彼のなかにはほかに比較対象がないのかもしれないが、じゃあ、大塚愛と比べたらどうなんだ。
aikoと比べたらどうなんだ。
YUKIだって充分男勝りじゃないか。
私からすれば、YUKI嬢とカエラ嬢のライブには、どちらも似通ったものがある。


それはコミュニケーションの成立、または不全について意識的であるということ。
私の勝手な見立てだが、このふたりは放っておいてもコミュニケーションが成立するとは思っていない。
だから客席に向けるMCがこっ恥ずかしくない。


余談ながら、往々にして客席から彼女たちに向けられる声、野次のたぐいは、たぶんにこっ恥ずかしいものだけど、それは受け手の問題で、彼女たちの関知するところではない。


他の凡百の女性シンガーが「どぅお? のってるぅ、オオサッカ!」などと語りかけているのを聞くと、それだけで席を立って去りたくなってしまう。
私の神経がそれだけやわということなのだろうが、それにしてもあれはないと思っているのだ、つねづね。
あの鈍感なMCを是正するだけで凡百の女性シンガーもずいぶん広くに訴えかけられる存在になると思うのだが、まあそういうひとはごく稀である。
ま、喋り手だって原稿書きだってそうか。「どぅお? のってるぅ?」式の呼びかけしかできないひとは多いものね。


ともかく、それに比べて、YUKIカエラの観客に対する態度は一級品である。
たぶん、相手の言うことを聞かないと、こちらが言うことも伝わらないし、そうやって最善を尽くしていても、シンクロ不調に終わることは数知れずあるーーそういうことを分かっているひとのMCであり、ステージなのだ。
そこがまず、なにより優れて現代的であると思う。


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