●世界が笑っても


the pillowsなんばHatch


前半は最新アルバム『PIED PIPER』からの曲でガンガンと飛ばしていく。
後半になると、いくつか旧譜からの曲も交えて。
やっぱり、ちょうど10年くらい前ーーアルバムでいうと、『Please, Mr. Lostman』『LITTLE BUSTERS』『RUNNERS HIGH』あたりーーの曲というのは彼らのライブのおいて、肝になるものなんだなと実感。


楽曲と演奏力がしっかりとかみ合っている。
それもただポップとかキャッチーとかメロディアスとか、楽器弾くのが上手、とかいうのではなくて、ひとことでいうなら、端正。
端正なカタチを保っている。
それはロックバンドがカッコよくあるためには、とても重要なこと。
ジャムだってキンクスだって、ブライアン・ジョーンズがいた頃のストーンズだって、セカンドを出した頃のビートルズだってそうだった。


その次に大事なのが、表現は端正だけども、感情は過剰ということ。
エモーションが、器から溢れ出る手前の、ぎりぎりの一点で踏みとどまっている感じ。
『All Mod Cons』と『Setting Sons』のときのジャムだって、ソリッドなビートを取り戻したアリスタ時代のキンクスだって、ブライアン・ジョーンズがいた頃の……(以下同文)。


俺がやりたいのはなんだ? 俺はいったいなにがやりたい?
わからねえわからねえよと言いながら、そんなことを探ってきた奴が書く曲と、そんな奴が弾くストロークとカッティング、そんな奴がスティックを振り下ろし、跳ね上げるハイハットだから、聴き手の胸を貫通する。
そういう説得力を備えることができるのだ。


ウォルター・ヒルの活劇映画を見ているかのような、90分間のグッド・テンションな本篇が過ぎ、アンコールに呼ばれて戻ってきたときの、山中さわお氏の科白がよかった。

「(先だって出演した某フェスの話から)……ほんといい人たちの集まりで。

俺もがんばったけど、ぬぐいきれない毒が出てしまって……。
でも矛盾はあっても彼らは80%やってて、こっちはなにもしなけりゃゼロなんだから。
そりゃあっちの方がエラい。

……けど、俺は人間性には自信はないけど……音楽性には自信あるんだ」

と叫んだあと、「ひさしぶりにやる」と始めた曲が(アンコールだから曲名書いてもいいか)、「Fool on the Hill」。


凄かったなあ。


そのあとつづけてもう1曲、「Blues Drive Monster」をやって袖に引っ込んだものの、拍手は鳴りやまない。


「さっきのでかなりキマったと思ったんだけど……」
と言いながら、ダブルアンコールに応えるべく、頭を寄せ合って相談する4人。
「HYBRID RAINBOW」が、この日のクロージングナンバーだった。


「云いたいことはさっき云ってしまったんで……」
ひときわ大きくなる歓声。
「……こんな愉しいことはないよな?」
応える歓声。
「また逢おう」


カッコいいけど沁みる、沁みるけれどくさくならない。
カツンと青いが、後ずさりしないだけのタフさを備えた、いいバンドのいいライブだった。


山中氏をみてると感じる。
四十近くなって生意気なのも悪くないな、と。
長ずるにつれて強いことを言い出すのは、天狗になったか成功に溺れてる人間のすることだ。
けど、売れる売れないにかかわらず、昔っから生意気だった人間の虎の縞は洗ったって落ちない。
それでいいんだと思う。



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PIED PIPER(初回限定盤)(DVD付) Please Mr.Lostman LITTLE BUSTERS RUNNERS HIGH Fool on the planet