●pupa is film.


pupa@大阪厚生年金会館・芸術ホール。


生音と電子の音のカンノー的なまでの繋がり。
両者を分けることに、まったく意味がないということを教えてくれる。


幸宏氏は、上手奥のドラムセットと中央手前上手寄りのボーカルポジションとを行ったり来たり。
対になる手前下手寄りには、知世氏が常駐。
結果的にはそのふたりがMCを取ることが多い。
曲間にふたりが話しているあいだも、残るメンバー・B型四人衆は、アンプをいじったりプラグを抜いたり差したり、チェックに余念がないご様子。
決して愛想がいいとはいえないステージマナーだが、これがなんというか、全体的にはどこか「家族」を思わせて微笑ましい。
プロモーションの際、幸宏氏がよく用いていた例えだが、幸宏氏がユルい病院長で、高野氏が実務的な副院長、知世氏がきりりとした婦長さんとか、あるいは六人兄弟とか(「てんとうむしの歌」かっつう感じ)。


そうして出てくる音は、端正でありながらまことに饒舌。
国籍不明ながら、紛れもなくこの21世紀初頭のニッポンで鳴らされるべき音という気がする。
使われる楽器の数に比例して、ということではないが非常に豊饒な音の奔流に浴することができて心地よい。
(知世さんが持つエレクトリック・バグパイプが不調だった様子なのが、唯一残念だったが)
こりゃやっぱ野外で観たいという声が上がるのは、むべなるかなむべなるかな。
なんというか、pupaという膜に包まれて、ぼんやりしていたい(蚕のように?)という気がする。
俺も朝霧で観たかった。


しかし、それにも増して、げにおそろしきは幸宏氏の目端の利きようと知世嬢の美脚ぶりかな。
後者は一目瞭然だが、幸宏氏のそれにもちょっと身震いがきた。
冒頭、「Jargon ~what's pupa~」に載せて、「pupa is *****」と、スクリーンにいろんな英単語が示されるのだが、この演出がめちゃハマり。
“pupa”というネーミングの妙や、この6人のメンバーが集められたことの意味や、この音像であることの必然やらが、いちいち肯ける。
揃いの衣装も、21世紀のイマジナリーな工場に従事する人のユニフォームという気がしてくるし。
すべてがズバリとキャッチャーミットに収まる速球のようにキマっている。
高橋幸宏というひとの、コンセプトメーカーとしての凄さに少々しびれる思い。




floating pupa