●2008年ベストソングス30傑・前編
年末ならでは、ってことであちこちの年間ベスト企画をみていると、自分も音楽でやってみたくなった。
したらば、Top10とかには、まるで収まらない。
なんとか絞って、30曲。一応、ベストテン世代として並べてみた。
ほんとは順位なんて関係ない。ただ、順番は関係あるかも。
iTuneのプレイリストで並べてみて自分で聴いてみると、やっぱこの流れかな、みたいな感じもあって、そんなこんなで30傑。
10曲ずつ、まいります。
# | song title | artist name | included item |
---|---|---|---|
21 | ハマ風 | CRAZY KEN BAND | |
22 | Anywhere | pupa | |
23 | 3% | 下地勇 | |
24 | わからない言葉で歌ってください | 友部正人 | |
25 | 全人類肯定曲 | 怒髪天 | |
26 | ぼちぼちいこか | 有山じゅんじと上田正樹 | |
27 | ギミサム・スレンテン | Rankin Taxi | |
28 | ヒロミ | eastern youth | |
29 | Goin' to Acapulco | Jim James & Calexico | |
30 | Nobody Right, Nobody Wrong | Michael Franti & Spearhead |
以下、注釈カウントダウン。
#30 「Nobody Right, Nobody Wrong」Michael Franti & Spearhead
考えてみると洋楽は、今年のものや新しいものって括りではほとんど聴いていなかった。
いくらか集中して聴いたのは、The RaconteursとかCSSとか。
あと、Adele、Giovanca、Estelle、Carla Bruni、Amy Mannといったあたりの女性シンガーたち。
Lisa Loebのサマーキャンプアルバムもよかった。
でもまあ網羅的に聴いているというには、ほど遠い。量的な貧しさは否めない。
なので、洋楽代表として、ここで1曲だけ挙げてみた。
2年前の秋に心斎橋のクラブクアトロで観たライブがあまりにも強烈だったマイケル・フランティの新作から。
レゲエがレベル・ミュージックであることを再確認させてくれる存在。
この曲は、タイトルにあるとおりの真理を、シンプルな音数で淡々と歌うナンバー。
この人に、ほかの誰よりもボブ・マーリィに近い匂いを感じるのは、こういう曲を歌われたとき。
#29 「Goin' to Acapulco」Jim James & Calexico
といいつつ、もう一曲、洋楽を。
これは洋楽カバーの代表で。
ボブ・ディランは出てこない、ディラン不在のディラン映画『I'm not there』のサントラから。
サントラが出たのは去年だけれども、映画の日本公開が今年だったってことで2008年選出にさせていただく。
とにかく映画自体も相当面白かったが、音楽のほうもさすがにナイスカバー揃い。
キャット・パワーの「メンフィス・ブルース・アゲイン」もいいんだけれども、やはり映画のなかでも非常に印象的に使われていたジム・ジェイムス&キャレキシコのこの曲を。
#28 「ヒロミ」eastern youth
これは邦楽カバー代表(ここから先は、ずうっと邦楽で)。
NHKの「みんなのうた」のカバー。
原曲を知らなかったので、iTunesでチラ聴きしてみたた、子供が歌っていた。「黒猫のタンゴ」みたいな感じ。
それを吉野寿がめちゃくちゃかっこいい(でもちょいと切ない)ロックンロールに仕立て直してる。
すごい。必聴。
#27 「ギミサム・スレンテン」Rankin Taxi|
これもカバーに限りなく近い曲ではあるが。
スペンサー・デイヴィス・グループの「Gimme Some Lovin'」の翻案。
今年聴いたなかで、なによりもパンクな一曲。
どのユンケルより効く。
#26 「ぼちぼちいこか」有山じゅんじと上田正樹
まさかまさかのリユニオン。
ライブでは、それこそぼちぼち一緒にやっていたふたりだが、「くいだおれ」の閉店が後押ししたか、よもや音源をリリースしてくれるとは。
で、ふたりの名義による、33年ぶりのリリース作の最後に収められていた曲がこれ。
ちょっとややこしいのだけれど、1975年に出た名盤『ぼちぼちいこか』には、この曲は入っていない。
今回出た『ぼちぼちいこか '08』に入っている6曲のうち、5曲は前作収録作のリメイクで、最後のこの曲だけが純然たる新曲なのである。
これが実によい。
うらぶれた感じの指弾きのギターにのせて聞こえてくるキー坊のかすれ声。
「昔はもっとよかった なんてこれっぽっちも 思わない
あの頃にもどれたら なんてこれっぽっちも 思わない
道頓堀の橋の上 赤い夕日 おぼえてる
ざわめく街 黄昏れた 遠い遠い夏の日」
沁みる。
ヘンな言い方だけど、「なにわのウォータールー・サンセット」かと。
#25 「全人類肯定曲」 怒髪天
北の暴れ狼、怒髪天の2008年の狼煙。
「生きてるだけでOK ほかはなんとでもなる」
「生きてるだけでOK なんか文句があるか」
こういうことを歌って説得力を持つというのは、さすが40を超えた年輪の為せるわざではある。
しかし40を超えたいいトシの人間は、普通、こういうことは歌わなかったりする。
だからこれは、相当絶妙なバランスの上に成り立っている、希有な曲なのだと思う。
http://jp.youtube.com/watch?v=zoBfkuoTnYY
#24 「わからない言葉で歌ってください」友部正人
3年ぶりのアルバム『歯車とスモークド・サーモン』がとてもよかった。
ここしばらくのうちで−−個人的には『奇跡の果実』以来の−−もっとも充実した作品集なんじゃないだろうかと思う。
21作目のオリジナルアルバムがこんなにすごいなんて、やっぱり友部さんとディランは特別だ。
この曲は、そのアルバムの前半、3曲目で早くも姿を現す7分を超える大作。
#23 「3%」 下地勇
そして、わからない言葉で歌ってくれるのが、沖縄・宮古島出身のこのひと、下地勇。
今年出たアルバムのタイトル曲がこれ。
衝撃度でいうと、今年いちばんかもしれない。
「世の中には“大概の人”とそれとは違う考え方をする“3%の人”がいる」ということを延々と歌う歌。
と、こう書くと、ロック的フォーマットにのっとって少数派賛美の歌かと思うかもしれない。
でもそうじゃない。
彼がここでいう「3%」には思いのほか大きな幅がある。
孤独な思いに囚われる3%がいる、恩を着せる3%がいる、寄生する3%がいる、妬む3%がいる、貧しいひとを食いものにして肥える3%がいる、ひとを監視する3%がいる、無神論者の3%がいる、争いを好む3%がいる。
そういう「3%」をどう思う? 少ない数かい?
3%は何でもないかい?
3%は無視してもいいかい?
3%を見過ごせないかい?
3%を許さないかい?
3%に立ち向かうかい?
3%と共存していくかい?
3%を君はどう思う?
下地勇は、こう問いかけるのである。
答えはひとりひとりが考えてくれ。
「3%」字幕付きPV
#22 「Anywhere」 pupa
まっこと世知辛いニッポンの音楽シーンにおける、2008年のミラクルのひとつ。
高橋幸宏の呼びかけで集まった、原田知世、高野寛、堀江博久、高田漣、権堂知彦ら6人によるコンセプチュアルな(けれどどこかユルい)バンド、pupa。
6人のうち5人までがリードボーカルを張れるという、CSN&Y的な属性も見事に発揮されたアルバム『floating pupa』は素晴らしかった。
いい曲がたくさんあるが、振り子のように規則正しく刻まれるリズムの上を知世嬢のヴォーカルが揺れるこの曲を。
#21 「ハマ風」 CRAZY KEN BAND
近作のなかでも特に“middle & mellow”寄りにふれたアルバム『ZERO』。
とびきり高性能なショックアブソーバーに支えられてるみたいな抜群不変の安定感もありつつ、次のレベルに突入したブレイクスルー感もある、大人の痛快作だった。
曲はどれもいいんだけれど、これぞ今年のドライビングミュージック代表!(ドライブしないんだけども私は)てことで、この曲を。
ファンの方による手製PV? カーステで流しながら撮影してる(と思われる)ところが微笑ましくもあり。
ここまで、ほとんど四十代以上のひとばかり。
Jim James(My Morning Jacket)と下地勇(39歳)くらいかな。
つづきはまた明日。
……つって、書けるのか、年内に?