●初詣2009


大阪天満宮へ初詣。
居並ぶ露店に、ちび1号は浮き足立っている。
「(ゲームのたぐいは)2つまでな」と申し渡したが、結局3つトライすることに。


最初のヨーヨー釣りは、あまり商売に熱意のないおばさんがやっていて、300円を渡すと「あいよ。これ、切れへんから、洗面器いっぱいに取ったらええから」といって釣り棒をくれた。
みると、棒とひっかけるためのW字型の金具のあいだは、従来どおりコヨリで結ばれているのだが、それが太いというか頑丈というかエッこれ何か別の材質のものちゃうん? てくらいの強靱さを誇るものになっていて、いくら水につけても弱る気配がない。
ちび1号はそれでもあまり水につけないように用心しながらヨーヨー釣りに挑戦していたが、切れる心配がないのだからいくらでも釣れる。あっというまに洗面器はいっぱいになった。
ふたつめの洗面器がいっぱいになったところで、「もうええか?」と訊くと、ちび1号もこくりと頷く。
それはそうだろう。切れない釣り具でやったって、面白いわけはない。


お姐さんありがとう、と声をかけると「あいよ。どれでも1個持っていって」という。
ちび1号はそれでも念入りに選んで、結果ドラゴンボールの図柄のものをチョイス。
おばさんはろくにこちらを見もしないで輪ゴムをくるくるとひねって、プラスチックのわっかをくるくると付けて渡してくれた。
ずっと隣のおじさんと話している。


もうそろそろ仕舞おかしら。
あかんわ、ちっとも。
来週のえべっさんはどこ行くん? 
十三? うちも一緒やわ。


客足がさびしいから熱意がないのか、熱意がないから客足が遠のくのか。
なかなかむつかしい問題だ。


2つめはスマートボール
「どれ(どの台)にしますか」「300円です」
小学校4,5年くらいの男の子が店番をやっている。
ちび1号は調子よく、3列にリーチをかけ、最後の一球で2列完成させた。
それを告げると少年は「はぁい……(裏から現れた母親とおぼしき女性に)2列ってどれ?」と訊ねる。
「あ、ここから選んでください」と100円ショップで売っているようなプラスチックのカゴを示す。
女の子向けのコンパクトみたいなものが並ぶなかから、矢の先が吸盤になっている弓矢を選ぶちび1号。
これを。
「はい。どうぞ」
少年は終始、無表情で応対をつづける。
私は基本、こういうのに弱い。
けなげな笑顔を見せられたりするともっと弱いので少年に愛想がないのは助かった。


これで終わりと言ったのだが、どうしても射的をやりたいという。
露店の射的で景品をせしめるのなんて宝くじで10万当てるよりむつかしいと思うのだが、男として挑戦したい気持ちはわかる。
最後やでと言い、派手めな化粧と黒いTシャツにスリムジーンズのねえちゃん(こっちはほんもののねえちゃん。ハタチ前後のギャル風)に千円札を渡すと、缶に入れたなかから500円玉を返してくれた。
煙草の灰を落としながら、ちび1号に銃の扱いを伝授してくれる。
「ここ(銃身の側面にあるレバー)を引いて……そう。そしたらすぐこれがバチンと戻るから、そのとき手ェはさまんように気ィつけて。はい、狙って」
愛想は悪くない。
最初の2発は、背後から私が銃身を支えてやったりしたが、ま、まず当たらない。
まあ当てることが目的ではないしな、と思い直してあとは好きに撃つように放っておいた。
ちび1号なりにじっくり狙いをすましているのだが、その前をギャルねえちゃんがひょうひょい横切る。けっこう客が来るので応対に忙しいのだ。
ひやひやするが、ちび1号の集中力は硬い。
おねえさんに当てんようにな、と声をかけてもじっと片眼をつぶって照準を合わせたまま微動だにしない。ゴルゴ並みである。ちびゴルゴ。
が、放った弾は的にかすりもしない。
総じて上の方に外れていく。
撃つときに銃身を上げてしまうせいだな。
……と、冷静にフォームを分析している自分に気づき、呆れた。
こういう目線で勉強とか塾通いとか進路とかを気遣われたら子供はたまらないだろうなと思う。
自戒しよう。


5発が終わり、成果のないちび1号に行くでとうながすと、銃を受け取りながらギャルねえちゃんが言う。
「あかんかったか。ほなコレ」
小さな飴をくれた。棒付きで、エンゼルフィッシュをかたどった水飴細工のやつ。
「あと、これはあの……いもうと? あのコにな」
ベビーカーに乗せて、後ろで見させていたちび2号をこなしながら、もう1本くれた。
「ちゃんとあげるんやで、ボク」


香具師もいろいろである。
ちょっといい気分になってちび1号を見たら、彼は飴にかけてあるビニールの袋を開けようと必死だった。


   *  *  *


帰りによった食堂で、夕飯を食う。
能勢の地酒という純米酒を二杯。
したたか酔い、帰ってからの記憶がない。
夜中に、出かけた格好のまま布団で寝ている自分を発見。
いかんいかんと起き出して、これを書いた。
風呂に入って、ちゃんと着替えて寝るのだ。元日に決めたのだ。


   *  *  *


ちなみに引いた神籤は「凶」だった。


「【そしりては徳あるべからず】
 今は、誠を尽くしても世に通じにくい。心静かに時節を待つのがよい。」とのこと。
なんとも示唆的である。
道真公の言葉かと思うと、やけにリアルだ。いやはや。