●American Way of Life 2009


昨日はマクドナルド、今日は東京ディズニーランドの記事が朝刊の1面を飾っていた。
マック、過去最高益更新 100円商品、節約志向と合致
オリエンタルランド、最高益見通し 入園者、過去最高に
どちらも「過去最高の売上高と純利益を記録した」とのこと。
マクドナルド(日本マクドナルドホールディングス)は08年12月の連結決算、ディズニーランド(オリエンタルランド)が09年3月の連結業績予想で、ということだ。
アメ車は息も絶え絶えなのに、娯楽方面のメリケンさんはしぶといのう、と感心したが、記事には共通した別のトーンがあって、それが目を惹いた。
マクドの場合は「100円メニューや期間限定割引などで節約志向を強める客を取り込んだ」、TDLの場合は「開園25周年記念イベントの効果に加え、節約のため海外旅行などを控えた人の来園が増えたようだ」とある。


共通するキーワードは「節約」である。


節約のために、ハンバーガーを食い、ディズニーランドに行く。
ハンバーガーが、まだ贅沢品の雰囲気を持っていた1970年代育ちの人間としては正直、あまりピンと来ない。


現在のマクドナルドが、家族連れや若者にとって最安値に近い外食を提供してくれる場所だというのは分かる。
ただ、それほど安い安いといえるものだろうか。
冷静に考えてみれば、米を炊いて、生卵を落として一食とする方が安く済ませられるのではないか。
5キロの米が2700円として、一合(150g)あたりは約80円。これに卵1つ使ってもプラス10円。100円足らずで、ハンバーガーひとつよりは腹持ちのする食事になると思う。
ディズニーにいたっては何をかいわんやで、決して安い娯楽施設ではないだろう。


こういう経済感覚に近いものを感じるのはアレだ。安いといって一晩1500円も取られるネットカフェを宿泊先にする心性。


1泊1500円というのは、月にすれば45000円である。
2畳にも満たない空間を、夜のあいだだけ間借りするのにそれだけかかるのである。
敷金・礼金・保証金のたぐいを用意するのは簡単ではないが、それにしても45000円である。
アパートの家賃に比べてそれほど安いという額ではない。
ほんの10年前まで私が住んでいた東京・吉祥寺のアパートは、風呂なし・共同炊事場・共同便所だったが、四畳半一間に半間の押入が付いていて21000円だった。


WEB環境を備えたネットカフェには、インターネット端末を通じてなら何でもある。……かのようにみえる。
少なくとも、そのように錯覚することが可能な場所である。
幻想のカロリー値が高い。栄養になるかどうかは別として。


そう考えると、マクドナルドもディズニーも、安いものではやはりないのだ。
しいていうなら満腹感が高いのである。
食物としてエンターテインメントとして高カロリーであり、また気持ちの上でもカロリー値が高い。
決して腹持ちがいいわけではない。じきに腹は空く。
だが幻想上の満腹が比較的容易に得られる。
だから支持されているということなのだと思う。


経済状況の悪化をよそに最高の利益をたたき出す業態には、どこか微かに貧困ビジネスの匂いがする。
どちらもかつては「アメリカンカルチャーへの憧憬」を素地にして登場したものだと思うと、皮肉な気もする。
極東で奇妙な形をして受け継がれたアメリカン・ウェイ・オブ・ライフ。



その行く末は見届けたい。