●リピート力

 『すいか』のシナリオが本になっていた。去年の夏に日テレ系で土曜の夜に放映されていたドラマ。その前のクールがクドカンの『僕の魔法使い』だったもんで、その流れで見ていたら、これが近年稀にみるすばらしいドラマだったのだ(といってもほとんどドラマ見てないので、ホントは他と比較なんてできないんだけれど)。

 キャストも秀逸だった。小林聡美ともさかりえ市川実日子浅丘ルリ子。そこにトリビアの左の人(ほら、もう名前が出てこない。他意はないんだ、えー、高橋カツミだっけ?)、金子貴俊、そして小泉今日子片桐はいりもたいまさこ。すばらしい。

 で、このドラマのグレイトさを賛美するのは、また機会を改めるとして、そのシナリオを読んで、なんとなく頭に浮かんだのは「リピート力」てな単語だった。
 私が勝手に思いついただけの言葉です。正確には「リピートさせる力」とでもいおうか。
 要は、その表現(エンターテインメント、文章、音楽、出し物、等々)が生じさせる、また見たい! 聴きたい! 読みたい! 体験したい! と思わせる力、てなもの。

 それが、そのメディア・・・というとしっくり来ないな。
 ヴィークルといった方がぴったりくる。「乗り物」って意味です。その表現が乗っかってくるカタチ。
 そのヴィークルによって、まず違ってくるよな、って話。

 人によるんだろうけど、私の場合のカウントダウンをしておくと・・・まず「音楽」は、聞き流すなんて言い方もあるくらいなので、ちょっと別にしておく。

 その上で乱暴に並べると、「演劇」>「映画」>「テレビドラマ」>「本」と来て、一番リピート力を感じるのは「マンガ」なのだった。
 これはもう、断固としてそうなのであって、三原順の『SONS』なんて、おそらく50回はいっているのではないか。50回くらいと思うかもしれないが、三原順のマンガは決して読みやすいものではない。絵は緻密で、ネームは最近の行間のやけに白い小説なんかよりよっぽどビッシリ詰まっている。
 あれが小説だったら、私はそこまで読み返してはいないだろう。そして、ここまで理解した(つもりになる)こともなかったろう。

 で、『すいか』の話。
 知り合いの女性は「『すいか』は、つまりは大島弓子(ワールド)なのだ」と看破してくれたけれど、たしかにそうだなと思う。
 リピート力が優れて高いのだ。
 敷居が低くて、つい中に入ってしまうが、入ると引き込まれて夢中になって、出てくるときにはちょっと背筋が伸びている。それがなんとなく嬉しい。だからまたその世界に触れたくなる。それを実現していたドラマなんだなあということを、シナリオというカタチで再訪してみて感じた次第。

 放映終了後一年以上も経ってからシナリオ本が出版されるなんてのもあまりないことで、その辺もいかにもあのドラマらしい。

 みんな、セカチューとかイマアイ(でいいんだっけか?)で泣いたりしてるヒマがあったら『すいか』見た方がよっぽどいい。
 先にシナリオ読んで想像を膨らませるのもいいと思う。

 話題の映画とか、イベントに参加するみたいにして通り過ぎるばかりやなくて、自分のなかで反響して、だから何回も読み返したり見返したりしたくなるものを見つけるのは、一生モンの快楽やと思う。『すいか』は充分それに足る作品。


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