●ROSSO:危険な遊戯、再び

ROSSO    [2005/3/11(金) ZEPP OSAKA


 新生ROSSOの初のツアーを見た。
 元ミッシェル・ガン・エレファントのボーカル、チバユウスケと元ブランキー・ジェット・シティのベース照井利幸を中心に3年前に結成され、第二期といえる現在のメンバーは、これも伝説的なバンド、フリクションの後期を支えたドラムス佐藤稔とギター、イマイアキノブが加わった4人組である。 
 場内にサッチモの「この素晴らしい世界」が流れ、しゃがれ気味の声でチバが「ハロー」と告げると、すべてが転がり始めた。
 寡黙なバンドだが、サウンドは雄弁。ひずんだギターから一転、クールなベースが刻まれたかと思うと、シャウトするボーカルが絡み、ドラムのフィルイン(アクセント的に挿入される短いフレーズ)を挟んでギターソロへと、主役がめまぐるしく変わっていく。その流れに身を委ねることに、なによりの快感をおぼえる。そんなステージだ。


 中盤に演奏された第一期の人気曲「シャロン」で観客の盛り上がりは最高潮に達したが、この夜の白眉はむしろ、そのあとに繰り出された10分を超える大作「チャド・イン・ヘル」ではなかったか。緩から急へ、劇的な構成でアウトローの生涯を描くこの曲。そのピークまで、目の前の4人と同じ時間をかけて到達するという体験。どこへ連れて行かれるのだろうという不安と興奮。
 物分かりのいい”大人のロック”とは対極にある、スリリングなロックンロールサーカスだけがそれを約束してくれるのだ。
 予定外の曲をチバが歌い始め、耳打ちと目配せだけでリズム隊がタイミングを合わせていくという場面もあった。
 コンサートが、CDの単なる追体験の場になってしまって久しい。


 ROSSOが始めた、ふたたび危険な遊戯。


 彼らの挑発に煽られて、若いファンたちがどんな風にたわむれることができるのか。問われているのは、むしろ聴き手の心の自由度のほうなのかもしれない。




【読売新聞・大阪版夕刊:2005年4月15日(金)掲載】


※視認性の向上を図るため、紙面掲載時のものに改行を加えています。
※見出しは、改めて書き手(大内)が付けました。
※掲載時見出し:「スリリングなロック体感」





DIRTY KARAT