●文化系ファンクは永遠に


岡村靖幸《TOUR '07「告白」》@なんばHatch


前回、Zepp Osakaで観た《フレッシュボーイ Tour》以来、4年ぶり?
30代が中心と思われる客層で満杯の場内。
服装が見事にばらばらなのが興味深い。
今風の基準に照らして、特別お洒落なわけでなく、かといってお洒落でなさすぎるわけでもない。
ファッションの傾向で括るのがむつかしい集団が1500人くらい集まっている。
それがなんだかリアルだ。岡村ちゃん的なリアリティという感じがする。


予定の開始時刻より20分近く押した頃、手拍子の打たれるなか、いよいよスタート。
シンセが鳴り、おってドラムがビートを叩き出す。
そこからの演出の詳細は控えるが、岡村ちゃん本人が登場したときの会場の反応は、やはり凄いものがあった。


今回、私は2階席から見ていたのだが、ぎゅうぎゅうに詰まったスタンディングの1階がとにかくうねるのだ。
モッシュというよりも鳴門の渦潮に近い。
そういえば、前のZeppのときは、あのなかに私も巻き込まれていたのだった。
30代も半ば以上と思われる、いってみれば「そこそこイイ年」のお客さんたちをここまで興奮させるものは何か?


岡村靖幸は「文化系ファンク」だという定義が私のなかにある。
たとえばFLYING KIDSもそうだった(彼らはもうちょい体育会系ファンクよりだけど)。


思うに、80年代のポップシーンにおいて、欲望ーー特に性的な欲望ーーを、最初に肯定してみせたのが岡村ちゃんだったのではなかっただろうか。
イビツな欲望を歌にするひとがいないわけではなかったが、それをメジャーフィールドで展開した。
その、欲望を引きずり上げた移動高度ーー日陰から陽のあたる場所までの高低差、レンジの広さーーにおいて、岡村靖幸はいまだ日本記録保持者だ。
彼がいなければ、たとえばスガシカオはもっと苦労したのではないか。そんな気がする。


「みっともない欲望」をオープンにして、そこに居場所を与えた。
だから、あのとき岡村靖幸の音楽に熱狂したひとたちは、イイ年になったいまでも、彼を目の前にすると、どこかタガが外れたようになってしまうのではないか。


それが、自分も1曲目から立ち上がって「どどど、どぉーなっちゃてんだよ」と声を上げながら考えた、私の仮説である。


去年がデビュー20年目だった岡村靖幸
そのあいだに男女カンケーにおける価値観やらナニやらは相当な紊乱っぷりを経た。
それでもなお岡村ちゃんの悩みやためらいは、燦然と輝きつづけている。
あたかも今夜のなんばHatchに吊り下がっていた2発のミラーボールのように。


文化系ファンクのキャプテンは、ダンスもスピンもターンも流し目も決まってた。
夢に出てきそうなくらいである。







はっきりもっと勇敢になって  Me-imi~Premium Edition~