●含羞の彼方に


うろ覚えだけど、ずっと以前、佐野元春が語ってたこと。

1970年代、はっぴいえんどの音楽を、自分は、好きだったんだけれど、同時に絶えずもどかしさも覚えていた。
松本隆さんの「ですます調」というのではーーわかる部分もあるのだけれどーー自分には物足りなかった。
なぜそこで「ですます調」なんだろう。
そこは照れずに言い切ってほしい、そんな気持ちが絶えずあった。
自分の真摯な心情を託すには、もっとグッとくる直截的な表現が必要だった。


というような趣旨のことを言っていたと記憶している。
中身は違うけれど、その「もどかしさ」みたいなことでいえば似たような思いを、そのライブに関して、ずっと感じているアーティストが私にはいる。
曲はいい。アルバムも、ことに一番最近のアルバムは素晴らしくよかった。
考え方や立ち居振る舞い方にもシンパシーを覚える。
さらにいえば、このひとにはギター1本でひとりで演るライブというスタイルもあって、それはもうかなり良い。
なのだが、バンドでやるステージには、いつももどかしさがついてまわる。
照れというか、外しの感覚というか、そこに微妙な違和を感じる。
その微妙な違和が、結果的には大きくて、なんだかすべてに醒めてしまうことに繋がっていく。


一度、No-MC Night的なステージを観てみたい。
口にマスクーー黒のビニールテープで×印を貼ったーーをして、すべて曲間ゼロ秒でやってくれたら面白いかもしれない。