●歌声はおこる
途轍もなかった。
4曲目を過ぎた時点で、なんだかとんでもないことになるような予感は沸々としたのだが、終わってみれば全28曲3時間、完全燃焼。
山口隆の言を借りれば「天国と地獄が一緒になったような」「暴動と結婚式が重なったような」、やはり途轍もないライブになった。
やはりこの3人はただのロックバンドに非ず。
いや、ただのロックだからいいんじゃねえかっていう言い方も当然あるだろう。
けれど、ただのロックをやるのは、ただではできねえ、というか。
大阪での初ライブは、いまは無きベイサイドジェニーでだったという。
客は(のちの盟友)メガマサヒデ氏、ただひとり。
しかし客がひとりだろうと、今夜みたいに800人いようと(ついでにいえば年末のイベントで1万人を前にしようと)まったく変わらずに歌い、演奏するのがサンボマスターなのだ。
あの頃と変わってないんだ。
だから君がひとりでも、オレはわっとやるよ。
それが……よくわからねえんだ。
今年の目標は? ……ねえよ。そんなのねえよ。
こうやってみんなでわーっとやったら、それで目標達成なんだ。
CDがね、売れなくなるんだって。
いろんなひとがゆうわけ。
……ソニーのひとやらは、そりゃがんばってCD売ろうって考えればいいよ。
でも関係ないひともゆうわけ。
「CDが売れなくなるよ」って。
馬鹿か。
馬鹿かっつうの。
「え、いいの? だって、CDなかったらデッキの再生ボタン押せなくなるよ」とかってゆうわけ。
メカの再生ボタンなんかどーだっていいよ。
オレの再生ボタン押しゃいいっての!
そう叫んで「美しき人間の日々」になだれ込んでいく山口、近藤、木内の3人は途轍もなくかっこよくて。
俺は俺で、涙というのはほんとにマンガみたいに、ぶわぁっと噴き出すこともあるものなのだと、ひさびさに思い知った。