●同期、息切れず、求心。


The Cornelius Group《Ultimate Sensuous Synchronized Show》@グランキューブ大阪
去年のツアーの延長線上にあるものだったが、より完成度を高めていた。
会場が、映像を見せるのに適したところであったのも大きい。
(ただ、奥行きがあるだけに、最上段の最後部あたりから見ると臨場感はかなり乏しくなるが)



席の背には1枚1枚、ツアータイトルが書かれたロゴポスターが掛けてある(裏面はツアーグッズのカタログ)。
全体の眺めもなかなか壮観。
アルバム『Sensuous』のジャケットの色に合わせて、青、黄、赤、黒の4色が用意されていた模様。
ブロックごとに色を分けて置いてある。粋なアイディア。


しかし開演前とはいえ、場内の写真なんて撮ってていいのか、と訝る向きもありましょう。
よいのです。
開場時に為されたアナウンスによると……

  • 今日のこのライブは撮影フリーである。
  • 営利目的でなければ自由に撮ってかまわない(ビデオ撮影であっても)。
  • ただしフラッシュは光らせないでね。

……ということなのだった。
ネットや動画コンテンツがどんどん先を行くこの時代、そんな部分で囲ってみても仕方ないということか。
音楽および映像表現について、自由な発想で取り組んできたCorneliusならではの粋な計らいか。


ご厚意に甘えて手持ちのデジカメで撮ってみたのが、これらの写真。
いかんせん広角28ミリの単焦点レンズでは、ステージ上の詳細まで写せるはずもないが。




さてライブが始まってーー



率直にいって、去年、このツアーを見ていた者でも存分に愉しめた。
1曲まるまる新しい映像が付いたものもあったりした。


「Fit Song」、リビングルームを飛ぶ角砂糖のアドベンチャー
一転、夜のリビングをパルスが跳梁する「Beep It」。
新TVネタ満載の「Another View Point」はとにかく痛快。
コヤニスカッティ』を想起させる、「Point of View Point」の首都高の流れにも目を奪われる。
オチがどうなるかも忘れて、ついつい入り込んでしまっていた。


夢中で見入ってしまうのはたしかだが、そのうちになんともいえないワビサビというか、寂寞とした感じに襲われもする。


「Omstart」に出てくる、ルネ・マグリットの絵画の世界にも似た幾何学的物体がゆきかうなかを歩く、目も鼻も描かれていない立方体犬(勝手に名づけた)が、ああも哀しく思えるのはなぜか。
「Like a Rolling Stone」のひとりぼっち(正確には大小ふたりぼっち)の石ころに空しく胸を衝かれる思いがするのはなぜか。


私の頭のなかに浮かんがのは、いってみれば「現代のフォークロア」という感覚だった。


フォークロア(folklore)……民俗学、民間伝承、民話。
21世紀のニッポンに暮らす、都市化された我々の、我々なりの、我々のための民話。
私たちの身近な場所で、身の回りにある日用品が辿る、ややデフォルメされた、やや奇妙な冒険行。
それは、昨今ハリウッドが躍起になって送り出しているファンタジーとは違うものだ。


「反復」を繰り返しながら進むこのショウで私は、子どもの頃に親や祖父母から繰り返し聞かされた、昔ばなしを見ているような感覚に陥った。
かといって眠りに誘われるのではない。
そこにはある種のテンションが掛かっている。
だから目の前で起こっていることに意識を集中して注視している。それがわかる。
その緊張感をもたらしているのは、「同期/シンクロ」という行為だ。


「同期」というのは不思議なもので、意志がなくては無理な行為である。
まったく打ち合わせることなく、自然に一挙一動がシンクロするなんてことはまず起こり得ない。
ところが、意志ばかりでは高度なシンクロは為し得ない。
合わせよう合わせようとしていたのでは、まずまちがいなくギクシャクした動きになる。
だから、こういうことになる。
意志を持った両者が、まるで意志など介在していないかのように互いの動きの一致を見ること、それが同期である。
だから完全にシンクロした動きにひとは、なにかしら人間の意志を超えたものの存在を感じるのではないか。


古来、舞踊におけるシンクロした動きに、なんらかの神性や霊性を感じ取る文化は少なくない。
踊り手たちの同期した動きに特徴を持つ近代バレエが、この世と天上の世界、あるいは、この世と異界を行き来する説話構成を持っていることにも通じている気がする。


と、概ねこんなようなことを新聞のライブ評で書こうと思っているのだけれども、どうかなあ。
4月から文字が大きくなって、字数が減っているのだ。
600字ちょっとでこんなハナシ、書けっかなあ。




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