●ラッキーな夜


ラッキーラクーンナイト2@ZEPP OSAKA
各出演者がしのぎを削って、見応えありまくり。
オープニングアクトのヨースケ@HOMEから数えると4時間半になんなんとするイベントだが、時間を感じさせない。
音楽的なバリエーションに富んでいるからだろう。


ひさしぶりに見たTRICERATOPSは、なかなかにロックしてロールしてて驚いた。
さすが、あの年代で若くから、オールドスクールなロックバンドをやり続けていただけのことはある。
個人的に、和田唱には「消費文化のなかでスポイルされていく男のリアリティとガッツ」を、あのパワーポップに載せてもらえたら面白い(ちょっとニック・ロウコステロ的?)と思っているのだけれど、まあそれはそれとして。
最新曲とデビュー曲がシームレスに繋がっていて違和感がない。
ある意味さすがである。


トータス松本 with John.B's Blues Hearts Club Band + 菅原龍平(Milco)。
ターが伊藤銀次でドラムが上原ユカリというシュガーベイビーなコンビでびっくり。
このバンドをバックに「ダウン・タウン」と歌うとはなかなか勇気がいるだろうに、菅原くん。
トータス松本は、シンガーとしての魅力を炸裂させていた。
カバー曲のセレクトも気が利いている。


脱線するけれど、最近カバーものの企画がめちゃくちゃ多い。
それも中堅どころが視点を変えてやってみましたというようなものではない。
新人のデビュー盤が(覚えてもらいやすいようにと)全曲カバーで占められていたりするのだ。
それもその選曲がとことんつまらない。
判でついたようにどれも似たりよったり。
そこになんらかのメッセージや企画性という趣向、当人の個別性が出たセレクトなら、8万歩くらいゆずってナシではナイかもしれないが、そんな工夫や苦闘は露ほども見られない。
「ターゲット層に耳馴染みのあるJ-POPをカバーしてみました」とかなんとかもっともらしいことを言う。
ニッポンのポップスにしたって、ほかにいくらだって曲はあるだろうに。
明らかに作り手の怠慢だと思う。


それはそれとして、トータスのこの日の歌は、センス、力量、洒落っ気、どれをとっても愉快千万。
似たり寄ったりのセレクトで石油資源の無駄遣いとしか思えないようなカバーCDを作ってる制作者は顔をウォッシュしてリターンされたし。


パイロットとスチュワーデス
王子様キャラを張れる桜井氏と、女カルメンキャラを張れるKAN氏ならではの音楽アドベンチャー
ハンドベルのところは、みんな言ってたことだけど、やっぱり正月の隠し芸大会に似た本気度を感じた。
おそらくみんなベーシックのパフォーマンスに加えて(それがすごいのはもう立証済みだから)、プラスどんだけ遊べるかってことを、存分にこの場所でやってるんだろうな。マジギャク。本気余技。


トリは忌野清志郎 & NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS。
清志郎は、やや動きづらそうだったけれど(あとで聞いたところでは、衣装がきつかったのと靴がすべりやすかったということらしい)、声はまた恐ろしいほど出ていたものねえ。


清志郎がステージの上でもバシャバシャ撮ってたカメラはFUJIのKLASSE(SだったかWだったかは忘れた)。
銀塩のフィルムがなくなるかもというので、友人のカメラマンのひとが「フィルムで撮った写真の展覧会をやる、ついては清志郎もありったけ撮ってくれ」ということで大量のフィルムとこのカメラを託してきたとのことだった。
この数日の大阪で撮った写真が、どこかで陽の目をみるかもしれない。


こういう場を作ることも媒体のひとつの役割だよなとひしひし感じた夜だった。
役割といっても受け身でやらされるというようなことではなく、とにかくオモロいからと、あくまで主体的に引き受けるニュアンスで。


(文中、敬称略したり略さなかったり)