●They have a dream that one day...


バラック・オバマが、民主党の大統領候補者指名を確定させた。
11月になれば、九分九厘間違いなく、彼が44代目の合衆国大統領としてホワイトハウスに入城することだろう。
ヒラリー支持者だったひとたちも、いまは恨み骨髄の思いから「マケインに入れる」と口にしていたりするが、しばらくすれば考え直すと思う。
冷静に考えてみて、ジョージ・ブッシュの8年が残した傷痕を思えば、もう4年、共和党が居座るという判断を“リベラル”なひとたちがするとは到底思えないからだ。


イラクの復興プロセスや対中国政策など、外交面でよほどのマイナスを踏まないかぎりは順当に行くのではないか。
新しいリーダーを選ぶときにより強いのは、「できるだろうか」という不安より「やらせてみたい」という期待値のほうだろうから。
経験値の不足が問題となるのは、その要職に就いてみたあとのことだろう。


とはいえ、劇画的な(ハリウッド的な)とんでもないことが起こるのがアメリカでもある。
アフリカ系の大統領の誕生がいよいよ現実味を帯びてくれば、それを疎ましく思う勢力の伸長も予想に難くない。
ヒラリーが口にするまでもなく、白人至上主義勢力によるテロルという可能性は皆無ではないのだ。
愚かなことがないよう祈る。


しかし自国のリーダー選出より、外国の指導者選びのほうが気になるのはなんでかな、なんだかな。



で、やはり連想してしまうのがMartin Luther King Jr.の演説「I have a dream」。

http://www.fuchu.or.jp/~okiomoya/tenpushiryou/dream.pdf
http://www.fuchu.or.jp/~okiomoya/i%20have%20a%20dream.htm


この映像でいえば、11分30秒を過ぎたあたりからの6分間。
http://www.americanrhetoric.com/speeches/mlkihaveadream.htm


「Go back to Mississippi, go back to Alabama...」のくだりから、
かの「I have a dream that one day...」のパートを経て、
引用した『我が祖国』の一節「Let freedom ring」を敷衍して
「だから自由の鐘を鳴らそう……ニューハンプシャーから、ニューヨークから……」と続けていくところ。


そしてラスト、「すべての神の子が、黒人も白人も、ユダヤ人も非ユダヤ人も、プロテスタントカトリックも」
手を取り合ってOld Negro Spiritual(古い黒人霊歌)を一緒に歌える日がやって来ると宣言し、
「we are free at last!」と言い切って壇を離れるまで。


んー、なんて格好いいんだろう。
言うべきことを、全体重以上のものを乗っけて押しだしている。
自分のなかに偏在している自信をかき集めて理想を口にし、理想を語ることで自信を得る。
キング牧師の表情に、私はそういうものを見る。口跡にそういうものを聴く。
何度聴いても、読んでも興奮する。


ただ大きな話をすればいいというのではない。
しかし日本の政治家や運動家から、理想を聞くことがついぞない。
耳にするのは状況説明というカタチを借りた言い訳や取り繕い、人の足を引っ張ること、クレームの類いばかり。
あとはせいぜい環境問題への啓蒙ゼリフどまりだ(「カンキョーのことを考えてもらえるきっかけになれば……」っていつまで言いつづけるつもりなんだろう?)。
自由の鐘を鳴らそうぜ。