●HAMAのMASAGOの尽きるMADE


劇団☆新感線2008夏興行・SHINKANSEN RX『五右衛門ロック』@大阪厚生年金会館・大ホール。



新感線の旗揚げは1980年11月。
当時私は中学2年。


初めて演劇を生で観たのはそれから1年後。
'81年の10月。
初めて買ったプガジャでプレゼントに応募したら、招待券が当たったのだ。


名古屋の流山児祥が主宰していた第二次・演劇団の公演『碧い彗星の一夜』。
場所は、阪急ファイブ8Fオレンジルーム。
北村想のロマンと流山児のアクションが入り混じった、テンポの小気味良い芝居だったように思う。
塩野谷正幸がカッコよかった。
でもまあはっきり覚えてるのは、ロマンポルノで活躍してた女優・小川亜佐美が胸をアラワにしてたことだけ。


ま、そんな具合なので、そこから演劇一辺倒になるわけでもなく、
なんとなく高校に進み、なんとなくだらだらしてたのだが、
申し訳ない、はっきりいうと、☆新感線は苦手だった。観たこともなかったくせに。


気取った高校生の趣味は、'80年代なりのアングラ方向を向いていて、野田英樹とか北村想の世界に傾斜していた。
もう少し長じて、唐十郎、つかこうへい、東京ヴォードビルショー、ラジカルガジベリビンバシステムといったあたりを射程に収めてからも、
プロレスとハードロックとマンガ趣味でぐいぐい押してくる(という噂の)☆新感線は、なんだがガキっぽくて勘弁、てな感じだったのだ。


で、それ以来、実に27年経って、初見の劇団☆新感線


面白かった。
ガキっぽい妄想も気にせず貫けば、ドエラい岩まで穿つんだなと思う。


あちこちから借りてきてツギハギしたようなストーリーではあっても、芯は通ってる。
統治者の痛みとか先住民の矜恃とか、そんなものもしっかり描いてある。


北大路欣也が存在感を発揮するのは当たり前として、主な登場人物は皆生き生きとしている。
芝居はそこがいいのだと思う。
音楽の世界でいえば、たいていのアルバムには捨て曲というか、埋め草みたいなどうでもいい曲が入っている。
三流のTVドラマや映画にも、ただ“ためにする”ような、説明のためだけみたいな役があったりする。
しかし、演出が生身の人間と長くつきあう芝居は、全員の持ち場をはっきりさせないと成り立たないのかもしれない。


とにかく、森山未來は身のこなしも踊りも演技も素晴らしいし、高田聖子の殺陣もしびれた。
松雪さん(って、なぜかさん付け)も峰不二子的役回りを見事に体現していた。
しかしなにより、古田新太が映えていた。なぜか格好良い。
って、なぜかは失礼だが、やっぱりなぜか格好良い。



上演時間、1時間30分×2=3時間少々はさすがに長いかと思ったが(たぶん、端折れば2時間20分くらいには端折れるとも思うが)、これだけの時間もプラスに働いていると思う。
それだけの時間、ともに過ごしてきたという達成感が最後のカーテンコールにも表れるところはあるかもしれない。


なかで印象に残ったセリフをひとつ。
真砂のお竜(松雪泰子)が、インガ(高田聖子)に投げる言葉。


「そんなまとめるようなセリフ言ってると……長生きできないよ」
(瞬間、私は「早く老けるよ」とつづくかと思ったのだが、まあ似たようなことか)


年を取るのも悪くない。
いろんなことを“まとめない”で、長生きするのも必要なことなんだな。
と、つくづく思う。