●“an actress, K2”終了


さて、過密作業気味で終始ヘロヘロになっていたこの1ヶ月。
実のところ、北京五輪の開会の日(八・八。末広がりの日。なんだか懐かしい)あたりからの記憶がほとんどない。
入魂の単発プログラムを作っていたのだが、結局その宣伝も書けないうちに、当のその番組、リピートのオンエアも無事終わってしまった。


http://funky802.com/service/Event/p/972
ここの9/19の回。
『an actress, K2』と題して、小泉今日子さんのロングインタビューでほぼ全篇埋め尽くしたのだった。
かけた曲は2曲のみ。
あとの45分間は全篇トークばかり也。


自分で言うのもなんだけど(て、自分で言ったっていいよね、私は小泉さんの話を録音して編集しただけの存在なんだから)、なかなか聴き応えのある映画論、女優論になっていたと思う。


前述のウェイン町山氏の吠え書きに事寄せれば……

  • それじゃ観てなくったって同じだろというくらいに内容のないトホホな映画案内。
  • 経験も浅けりゃ学習も足りない素人の印象にすぎない感想語り。
  • 泣けるか笑えるか、どっちかを強調するだけで要は感情にどう機能するか(それじゃクスリのCMと同じだぜ、てゆうか薬事法違反じゃねえのかそれ)ってだけの作品アピール。

……等々、映画紹介にかこつけた空虚なお喋りは、まっこと巷にあふれているけれど、そうゆうのとは一線を画したものになったと思う。
あくまで喋ってる小泉さんの言葉が素晴らしいわけですが。


作り手側からすると深いところでの反省点は、そりゃもういくつもある。
あるのだけれども、それはそれとして、こういう形のーーほぼトークオンリーの番組の、ひとつの形を提案できたことには達成感がある。


NHKの「ラジオ深夜便」には市井の無名の人たちのインタビューをやはり1時間近くにわたって聴かせるコーナーがある。
あれもひとつの参考例だけれど、そうなのだ、ここ最近、ひとの会話、話ということに興味が向かっている。
村上春樹の『アンダーグラウンド』を読み返しているせいもあるかもしれない。
アメリカの市民たちへのインタビューを集めて分厚い本にするスタイルで知られるスタッズ・ターケルが、もとはラジオ・パーソナリティ出身というのもうなずける話。


ラジオに声を。中身のある話を。


最後に蛇足ながら。
ちょっと気合いを入れた構成・演出の番組を作ると、すぐ「濃いなあ」とか言う人がいる。
彼らも、別に揶揄するつもりなどないんだろう。
ただ一元的な印象で軽い感想を口にしているだけなんだろう。
けどまあせっかくなので、そういう方々には不遜ながら教えてあげたい。
ほかにもっとシンプルな言い方があるから、これからはこっちを使うといいと思う。


あれはね、別に濃いっていうんじゃないんだよ。
あれは、「内容がある」っていうんだ。


アメリカン・コーヒーみたいな薄味に馴れすぎた人は濃いって感じるかもしれないけれど、世界の浸透圧はそんなにやわじゃない。世界はそんなに呑気じゃないんだ。
内容をともなった切実な言葉を必要としている人間がいっぱいいるんだ。




我が執心のキョンキョンプログラム、「聴いてないよー、聴かせろよー」という方、個人的オファー大歓迎。同録有り升。