●とうといいじかん
夕方、雨が上がったのを見て、江戸堀へ。
高名を拝聴するばかりで、不覚にも行ったことのなかったcafe marthaへ。伺うにはまことにいい機会。
目当ては、PoPoyans。
噂の女声デュオの関西初ライブである。
ジャケットにあるのに近い、アイボリーっぽいホワイトのワンピース姿。
ニンフ(妊婦じゃないです。nymphのほうです)っぽい、もしくは(あとで登場した杉瀬さんいうところの)「コロボックル」風?なふたり。
ともにガットギターをかかえて登場。
cheru嬢が弾くアルペジオでスタート。
軽い緊張を感じさせつつも柔らかい、そんなギターに乗って、薄いハミング、nonchan嬢の鉄琴が重ねられてゆく。
らーらーららー。らーらーららー。
ひと呼吸おいて、ユニゾンになる瞬間。良い。
(この1曲目のエンディングは、ちょっと男心にぐっと来るものあり)
30分少しのあいだ、7曲のステージ。
とりわけ終盤が、曲、演奏ともども良かった。
「雪のうた」(表記は違うかも。漢字かもしれない)。
それから、最後の「おめでとう」(終演後に買ったCD『こわくない森』に入ってた)。
実はこのラス曲の前、ステージでは静かな混乱が生じていた。
間際でcheru嬢が、曲をこれに替えると言い出したのである。
チューニングを変えかけていたnonchanさん。
耳打ちされ、ちょっと「なにィ?」という表情。
「このタイミングで曲を替える……と?」
関西弁でいうところの「やるやん、自分。ふふん」的な空気を相棒にちらり投げて。
「……えー、チューニングの必要はなくなりました」
ぐっとほぐれた笑いが広がった。
「martha」というウッディな会場の、広い窓をバックにした開放感ある雰囲気もあって、なんというか、いい時間が流れてるなあ、そういう時間にひさびさに身を置いてるなあと、しみじみ。
外は突如吹き荒れる強風で、新なにわ筋の並木はぐねんぐねんと揺られていたのだが。
それにしてもPoPoyans。
ふわりと漂うリズム、砂糖じゃなく果糖系の甘い声……なのは確かなのだが、「浮遊感」とか「連れていかれる」みたいな、よくある言辞を弄するのは憚られる。
「癒し」とかそんな安手の言葉では間に合わない、なんとも貴いものを見ていたような感じが残る。
いつか、凡人には到達しえない場所の風景を歌と演奏で垣間見せてもらえるかもしれない。
そうなると、とても嬉しい。
この夜、二番目に登場したピアノ弾き語り(1曲だけギターも披露)のシンガー、杉瀬陽子さんもよかった。
鍵盤も声も転がるような、ミディアムアップな曲が秀逸。
叙情的なグルーヴが底に流れている。
ローラ・ニーロみたい。
最後にやった「ルーシー 見上げればジョバンニが手を振って……」という歌、もう一度聴きたい。
と思っていたら、MySpaceでページを発見。
http://www.myspace.com/sunschild
そのまま「ルーシー」というタイトルだった。
うん、やはり、いいなあ(しかしMySpaceって、ほんと便利)
杉瀬さんのあとで早退したので、最後の笹倉慎介氏は見れず。
ただし出しなにPoPoyansのアルバムを買ったら、おまけに一曲入りのCD-Rをもらった。
Shinsuke Sasakura × PoPoyans名義の「Christmas Waltz」。
小品ながら、これがとても良い。
笹倉氏、見逃したことを少々悔やむ。
かように貴い異時間を過ごしたのだが、帰路は嵐。
雨は少量だが、横殴りの風が笑えるくらいに強烈。
少々身の危険を感じながら土佐堀川、堂島川をわたり、仕事場に戻る。
これも人生である。
ワラワンダフナイト。