●目方で男が売れるなら


先週の月曜日は、朝7時前に家を出て四国松山に行き、翌朝やはり7時前には家に戻っているという弾丸ツアーだった。
この「移動する月曜日」というラインは同じ感じで、今週もスタート。


まず、午前10時に家を出て、新大阪へ。
新幹線、山手線を経由して、午後2時に渋谷着。
渋谷に滞在したのは2時間半で、GO! GO! 7188のインタビュー取材を終え、午後4時すぎに品川にて、のぞみの下りに乗車。
6時半すぎに新大阪に着き、そのまま地下鉄御堂筋線で心斎橋へ。
夜7時すぎにアメリカ村KING COBRAに潜入。
怒髪天のワンマンに、なんとか間に合うことができた。


縦長の場内は満杯。
女性客もめきめき増えている。
「NO MUSIC, NO LIFE」でスタート、「北風に吠えろ」「蒼き旅烏」と続く、情熱と興奮の新旧波状攻撃。
つづくMCでは、高貴な振る舞いでつとに知られる某女優様のご成婚に言及。

テレビで、ふたりが結婚に至るまでのエピソードが紹介されているのを見ました。
「北欧の国で、皆既日食のリングを見ながらプロポーズ」
「スーツケース4つ引きずって地球の果てまでついてこい」
……聞いていて、いちいちイライラするのはなぜ?
幸せな話のはずなのに、イライラするのはなぜなんでしょう?

爆笑喝采のなか、「ビール・オア・ダイ」へなだれこむ。


「寄り道ばかりしてきた、道草ばかり食ってきたけど、まだまだ家には帰りたくないんだ」
そんな感じの新曲「寄り道」も聞かせてくれた。

そしたら、オリコン1位が、いきものがかり
「早く家に帰りたい」みたいな歌。
もうね、真逆行ってますから。
またやっちまったかみたいな感じ。

自分下げトークも快調、なれど、その心配には及ばぬエエ曲だった。


蛇足だが、兄ィが得意とするようなこの種のトーク、私はこういう態度を自虐とは呼びたくないのである。
実際、これはタクティクスのひとつでしかない。
自分を下げて笑いを取る(つまり、周りの連中を笑わせてやる)ために戦術的に採択された態度なのであって、別に自分を虐げることに主眼があるわけではないんだから。
しいてどちらかというなら、行き過ぎた謙遜なのだと思う。


なので、提案したい。
こういうの、「自虐」とかいっちゃうとすんごい大袈裟でしょう。
「自虐」って、字面からしておどろおどろしいもの。
そんな風にいうのはよして、単に「自分下げ」、略して「自下げ」ということにしませんか。
敬語の解説でよく言うでしょ、自分を下げてとか相手を持ち上げるとか、赤上げないで白下げないとか。


自虐史観」とかいうのも、「自下げ史観」と呼んでみるくらいの軽やかさがあるといい。捉え方も違ってくるだろう。
(って、あれはあれか、もともと蔑称として敵対勢力が名づけた呼び名だものな。「自省史観」と呼ぶべきだという意見もある)


話が逸れた。
そんな痛快な喋りを交えながら増子の兄ィは、天井から下がっている梁代わりのパイプに巧く身をまかせ、踊るようにビシバシとポーズを決める。
たぶんKING COBRAのステージの高さは、そういう増子兄ィの動きにぴったりなのだ。
詰めかけた客の後ろからは、舞台に立っているメンバーはちらちらとしか見えない。
だが、モニターに足をかけ、梁に手をかけて増子さんが伸び上がると、その姿がよっく見える。
そうすると、ぐっと近づいたように感じるのだ。
その効果が抜群に発揮される、そういう小屋の特性も充分に味方につけて、疾走する演奏と唄。
笑いながら泣けてくる、寅さん的ワールド。


怒髪天
それから、Theピーズフラワーカンパニーズ
この3つのバンドは、渥美清なき現代のニッポンにおける、紛うことなき宝である。


いま挙げたバンドの面々がテキヤになって、秋祭りの神社の境内のあちこちにいる、そんな光景が頭に浮かぶ。
こっそり尾いていって弟子入りしたい。
ギターは弾けないっすけど、カルメラやったら焼けるようになるまで頑張ります。
そういう人生も、いいじゃないか(まず俺じゃ、つとまらないけど)。




労働CALLING  全人類肯定曲  D-Stance~1999-2004フライトハイトイヤーズ