●しまなみ海道をゆく #3 〜大三島から今治まで
09:00 多々羅キャンプ場、出発。内陸部を横切って島の反対側を目指す。
09:30 三村峠、通過。
09:35 大山祇神社、着。
門前のたたずまいは静か(少しあとで、団体の観光客がやってきたが)。
境内に入ると、正面に巨大な楠。樹齢2600年のものらしい。
毒蛇注意……物騒な掲示だが、ここは、フツーに境内の中なのである。
右手に折れ、離れにある宝物館へ。
入場料1000円は高かろうと思ったが、取材で来ているのだ、と意を励まして入館。
このなかにある鎧を見に来たのであるから。
なにげなく、源義経奉納とか源頼朝奉納とか書いてある。
このポスターでいうと、左にあるのが義経のもの。
結果、それだけの価値はあると思った。
海の神、山の神、そして戦さの神として崇められたこの神社には、古来からの数多くの武具が奉納されている。
国宝・重文指定されている全国の鎧のうち、4割がここにあるという。
刀剣の類も多い。
この手の武具というのは、人間が身につけていたものだ。
だから図録などで見るのとはまるで印象が違ってくる。
物の、実際の大きさ、厚み、重みを感じながら見ると、起動される想像力の桁がひとつ上がる気がした。
なかでも驚きをもって見入ってしまったのが、義経の鎧。
壇ノ浦の戦いのあとで奉納したという。
前掲のポスターを写した画像をよく見てみてほしい。
わかるだろうか。
胴丸にほどこされているのは、菊枝文の模様なのだ。
戦場に出かける道具に「花柄」である。
長じても牛若は、やはり洒落ていたということか。
思わず長居してしまった。すでに1時間以上経っている。
併設されている海事博物館ものぞいてみたが、これはこれでコワいとこだった。
12:00 大山祇神社、出発。
12:40 大三島橋が見えてきた。
橋を渡る。
13:00 伯方島に入る。
13:10 伯方SCで昼食。伯方の塩を使っているという塩ラーメンと蛸めしのセット。
ラーメンは普通。蛸めしは美味かった。
13:30 伯方・大島大橋。
歩道&自転車道からだけアクセス可能な島、見近島。
キャンプ場もある。
橋の上から見る限りではとてもいい感じのキャンプ場。無料だそうだ。
クルマは入って来られないっていうのがええよね。
次に来るときは、必ずここに一張りするべし。
13:50 大島に入る。
路上に、なにやら発見。
蛇。全長30センチくらいだろうか。
それでも立派に頭が三角である。柄もなにやらエキゾチックである。
毒蛇? 大山祇神社の境内にあった警告がここにきて発現?
蛇のせいばかりではないけれど、大島は、いちばんローカルな印象の島だった。
内陸部を突っ切ったせいかもしれないけれど。
VOW的物件にも事欠かない。
民宿「さだめ」。一度泊まったら最後、チェックアウトできそうにない。
カラオケボックスらしきプレハブのポップな壁画。
皆、ジーンズが足元まで下がっているのは何故? どーゆうイメージ?
三連吊橋の眺めは圧巻である。橋好き、巨大建造物フェチの諸氏にはたまらん眺めであろう。
15:18 橋の上を走る。
3つの橋を合わせた全長は4キロを超える。
ここにも、橋の下で橋桁を支える島がある。馬島。
ここはクルマでも降りられる。
15:50 橋、渡り切る。
今治側の展望台に鈴なりになっている人々が見える。手を振られる。手を振り返す。
走り切ったなあという感慨がふつふつと湧いてくる。
今治の造船所の、キリンの大群みたいなクレーンの群れが迎えてくれた。
16:00 サイクル・ターミナル「サンライズ糸山」で休憩。
トイレを借り、ポカリスウェットを一気呑み。
16:20 サンライズ糸山、出発。
今治市街へ。
16:40 今治駅、到着。
輪行セッティング、20分足らずで完了。
17:04 しおかぜ26号に飛び乗る。
車内で切符購入。
19:11 岡山駅、到着。
19:23 岡山駅から新幹線。
自由席はかなり混んでいる。
明日から三連休ということをすっかり忘れていた。
デッキで自転車を支えて立っていると、声をかけられた。
「自転車ですか」
ショート丈のジャケットの似合う、なかなか男前の青年である。
「自分も去年、横浜まで自転車で行ったんです」
松山から来て、今回は「そのときにできた友達を訪ねて姫路まで行く」のだという。
そういう出会いが、いまも、あるところにはあるんだなと感心した。
松山、いいとこですよね、つい二ヶ月前に初めて行きました。
と言うと、「ありがとうございます」とニカッと笑顔になる。
今年に入って、なんだか急に四国、特に松山に縁があるなあ。
東尾道で降りたときもそうだったけど、最後もなんだか昔の旅行をフラッシュバックさせる出来事で締まった感じ。
姫路に着くまでの数十分のあいだだったけれど、お互いに喋りつづけ、最後にアドレスを交換して、青年は降りていった。
のぞみは新神戸を経て、大阪市内に入っている。
キタのビル街が見えてきた。
日常に(日常が)帰ってきたのだ。
20:15 新大阪、着。
いまにも雨が降りそうだ。急いで自転車を組み立てる。
21:15 帰宅。
※ この取材行をもとにして書いたコラム2本は、JALの機内誌SKYWARDの5月号(5/1〜5/31機内配布)に掲載予定。
時期が来たら、アーカイブとしてここでも読んでもらえるようにしようと思っています。あしからず。