●アンドラの闘い


ツール・ド・フランス2009、第7ステージ。
バルセロナを出て、アンドラ公国へ。ゴールはアルカリス山の頂上(2240m)。
今ツール最初の本格的な山岳コース。


ステージ優勝は、これが初ツール参加にしてプロ入り初勝利となった驚異の23歳、ブリス・フェイユー/Brice FEILLU(AGRITUBEL)。
最後はとにかく、運に賭けてみようと思った。だから『ここでアタックしてみよう!』と思った瞬間にアタックしてみたんだ。
作戦とか駆け引きとか、そういう有象無象から触手を伸ばしてこられる前の、ピュアな言葉。


その彼のゴールシーン。
http://image.cyclingtime.com/photouploads/photos/124/124526.jpg


ジャージの胸の部分にはスポンサーロゴが刻まれている。
だからゴールする瞬間はジッパーを上げて、スポンサーの名前がしっかり見えるようにするのがプロ選手としてのマナーではあるのだが、そういうことを気にする余裕はないといった感じ。
胸をはだけたままの……んんむ、なんといったらよいか、東野・今田のN極S極君を思い出させるジャージ下の姿はきわめて微妙やなーと思わないでもない。


思わないでもないのだが、これも闘いを終えたあとのひとつの姿ではある。
6年前は、ピチピチのタイトなサイクルジャージも、エイリアンみたいなヘルメット姿も、正直「ヘンな格好」としか思えなかった私だがいまはそうではない。
フェイユーのこの姿にも−−我ながら不思議だが−−大いに感動している自分がいる。


そして第7ステージ終了時でマイヨジョーヌを獲得したのは、200キロ近くの大逃げが効いたリナルド・ノチェンティーニ/Rinaldo NOCENTINI(AG2R)。
http://image.cyclingtime.com/photouploads/photos/124/124542.jpg
前日の総合32位(1位から3分13秒差)からのジャンプアップ。
意外な伏兵が毎日登場して飽きない。


しかし、この日もっとも観客の目を惹いたのは、マイヨジョーヌの行方とそれにともなう、この人たちの動向だったろう。
http://image.cyclingtime.com/photouploads/photos/124/124515.jpg http://image.cyclingtime.com/photouploads/photos/124/124529.jpg


この勝負は、若き王子が有無を言わせない爆発的な登坂力を見せた形になった。


ランスはコンタドールの独走を支えるべく、アンディ・シュレクカデル・エヴァンスというライバルたちを抑える役目をこなすことに徹した。


結果は……

1位 リナルド・ノチェンティーニ(ITA, AG2R
2位 アルベルト・コンタドール(ESP, ASTANA)+6"
3位 ランス・アームストロング(USA, ASTANA)+8"

ランスとコンタドールの、「どちらがASTANAのエースか」問題の答えは、この日のふたりの動きだけでは、まだまだわかるものではない。
両者の一騎打ちは、僅差を維持したまま第18ステージの個人TTを迎えたとき、はっきりするものなのかもしれない。


とはいえ、そこに至るまでの道のりは、まだまだ長い。
アンディ・シュレックは9位(1分49秒遅れ)。
3週目にこそ底力をみせてくるカルロス・サストレも15位(2分52秒遅れ)。
ここにきて盛んに、果敢なアタックを試みているエヴァンスは18位(3分07秒遅れ)。
山岳で動きがあれば、まだまだわからないだろう。