●渋谷・千駄ヶ谷・新宿、快晴


10月11日の日曜からの一週間は、とても濃密な日が続いた。
なんというか、やけに心に残るものがあった。
記録として留めておきたい。


twitterのまとめログを骨に、補足を肉付けする形でやってみようと思います。


   *  *  *


昨晩は、渋谷センター街の魚系居酒屋でひとり酒。
のち、このところ、ほとんど定宿となりつつあるセンター街のネットカフェに潜伏。
ライブの余韻と興奮から、ほとんど眠れず。


一枚貸してやるというのでカウンターでDVDを借りて見てみる。
とある人気コミックを、三部作で実写化したものの最初の一作。
予想はしていたが、ここまでか! というくらいに、つまらない。
マンガで上手く嘘をつくのと、映画で巧みに嘘をつくのは同じじゃないのだ。


朝、午前8時、チェックアウト(というのかな? ネットカフェでも)。
ちなみに料金は、8時間で1700円(休日前なので100円増し)。
経済的に助かるのはもちろんだけど、チェックインの時間が読めない場合は、ホテルより気が楽でいい。
寝るところ(ホテルじゃなくていい)、移動手段(タクシーはむしろ嫌い)、食べるもの(空腹なときが一番美味い)、中年になってもとにかく安上がりな人生である。


天気は快晴。
打ち合わせがあるので、新宿に向かう。
とはいえ、約束は11時。それまでに着けばいいので歩いていくことにする。
地下鉄……じゃなくて、東京メトロ副都心線にも乗ってみたかったが。
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明治通りを北上。
PINK DRAGONが見える。スタートから30年以上経ってるはずだけど、いまなお健在。
すごいことだと思うけど、ふっと疑念も湧く。
それって、ここで手に入るカルチャーが、ある意味、最初から仮死状態というか、コールドスリープ状態に置かれていたからでは?
飾り箱に入れられたロックンロールは日保ちもいいってことだろうか?
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ここも裏原宿というのかな。
穩田商店街の裏手のストリート。
外国人子弟の姿しか見かけない。
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表参道に出た。キディランドの横。
ここははらじゅくー、おもてさんどーナンパストリート。
原宿、表参道と聞いて、直観的に「水谷豊」を想起してしまう人間は、どのくらいいるものなのだろう。
……いないな、きっと。
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と、神宮前の交差点で、馴染みのあるふたりの姿を発見して驚愕した。
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正面にまわって、確かめる。
GAPのショップである。
エントランスの上に堂々と立っているのは……岸田くんと佐藤くんやないですのん。
自分ら何してるんな、こないなとこで。
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そうか、こういう展開が為されているのか。
別に個人的に親しいわけではないけれど、さすがに原宿でこういう事態に遭遇すると、余所の土地で知り合いに会ったような気持ちになる。
歩き回ると発見がある。
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引き続き、明治通りを北上。
原宿警察署なるものを発見。
まるでフジテレビの刑事物のロケセットみたい。
ここって、前は、何があったんだっけ?
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このあたりは、60-70年代に出来たモダンなアパートメントが多く残っている。
これは64年に建てられたビラ・ビアンカ
かの奇人・美術評論家青山二郎の終の棲家もここだったとか。
そういうこととはまったく別だけれど、この建物を見ると、いくつになっても個人的な苦い思いが湧いてくる。
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天気のせいもあったけれど渋谷から歩くことにしたのは、ひとつにはここに寄りたくなったから。
昨日のライブで、CHABOさんのMCに70年代当時の話がよく出てきた。
「新婚まもない頃もよくキヨシローが訪ねてきた。コーラ持って」
それがこの街、千駄ヶ谷


なかでもこの鳩森神社には、二人で曲を作りに来たりしたという。
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そういうこともあって、千駄ヶ谷は個人的に好きな街。
外苑や新宿御苑が近いというのもいいな。
10年ちょっと前、東京でバイク便をして暮らしていた頃も、よくこの辺りで待機してた。
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さて、3時間近くぷらぷら歩いてきて、ようやく新宿着。
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   *  *  *


ミーティングの相手は、大学の自主映画サークルのときの後輩。
いまや、バリバリ作品を撮ってる映画監督であり、脚本家である。加えていうなら、別嬪さんである。


ひょんなことで(この言葉、便利やなあ。ひょんってなんだかわからないけど)、少し前に連絡先が知れた。
そのときはメールが2往復ばかり行き交った。
しかしそれも、主に私の怠惰のせいで、またそのままになってしまうところだった。
だが、ひょんなことは続く。
彼女がいま手がけている映画のことで、不肖ワタクシが手助けできそうなことがひとつあるという。
そういう連絡をもらった。
ちょうど東京へ行く機会と重なったので、その打ち合わせを兼ねて会いましょうということになった。
ほぼ20年ぶりである。


と書くと、なんだか片岡義男の短編的な世界が広がりそうだが、そういうものでもない。
新宿東口の純喫茶の地下で大阪弁が飛び交う様子は、どちらかというとやっぱり「ちりとてちん」の方が近い。


でもまあ、とにかく嬉しかったな。
私の記憶と意識のなかでは、ついこないだまでハタチ前の娘さん……てな女の子が、立派な演出家なのである。
人生は面白い。


お互い、あまりスクエアな暮らしはしていないので話は合う。
昔話は少々。いまの話を沢山した。
最近の映画の話……「グラン・トリノ」「ザ・レスラー」「空気人形」。
マーケティングでしか発想のできない映画関係者/音楽関係者の話。
たくましい表現者の言葉を聞くのは愉しい。


20年前とひと繋がりになっている感じが不思議だった。
話の中身は今のこと。でも今は昔と変わってない。
そんなはずはないのにな。


あの、正門を出て右へ、閑静な住宅街に入ったところにあった喫茶店はなんて名前だっけ?
魚に関係のある名前だったんだけど。


嬉しい邂逅の時間は、瞬く間に過ぎた。
演出家は編集作業に向かうという。
道すがら、「今日が祝日だと今わかった」という。
「昼休みも過ぎてるのに、人が多いなと思ってたんです」
こういうところも変わってない。
が、まあ、編集中の監督というのはそういうものか。男女の別は関係ない。
再会を約して別れた。


   *  *  *


少し時間のある私は、またぶらぶらと歩くことにした。
明治通りを渡り、新宿御苑に来てみた。
http://twitpic.com/l88lm


池の向こうに、摩天楼が見える。ここだけ見ると、ほとんどセントラルパークである。
http://twitpic.com/l88th


ねえ、上の池の鴨は、冬になったらどこへいくんだろうね。
と、ホールデン・コールフィールドの口真似をしつつ、御苑を横切る。
庄司薫の「青髭」を読んだのは、どのくらい昔のことだったっけ。


そうだ。サンボマスターの新曲が、途轍もなくいい曲だった。
「ラブソング」というタイトルだけど、これはきっとあのひとに宛てた歌だろう。
なあ、山口。
それらしいことを匂わせるような引用も、オマージュめいたくだりもない。
けど間違いないと思う。
物凄くストレートな……そうか、だからやっぱりラブソングか。


千駄ヶ谷門から外に出る。
あと30分で閉門だという。


千駄ヶ谷駅のホームには強い西日が差していた。
http://twitpic.com/l8cmm


大阪へ帰る。
土曜の朝からほとんど寝ていないが、気分はいい。