●府庁舎を市庁舎に!


備忘日録も埋めていくことにして、今日は今日とて思ったこと。


大阪ではこの府庁舎移転問題がふたたびホットな話題になりつつある。


「府庁移転決断を」平松大阪市長が府議会で要請


平松市長のソフトな物腰には好感が持てるのだが、この件に関しては、ハコモノ発想に変わりないのが残念。
橋下知事の大声と大きな身振りはもっと残念だが。


耐震性に不安があるというが、いまある府庁舎を使い切ってみるべきではないか。
避難方法だけはしっかりとやっておいて、地震で建物が倒壊するならするに任した方がいい。
地震であちこちから火の手が上がるなら一緒に地べたでキャンプを張って、そこで生き延びる策を考えて欲しい。
見晴らしのいい地上250mから指令を飛ばすっていう、子供じみたイメージからは抜け出していただきたい。


転ばぬ先の高価な杖を買って安心している場合じゃない。
100億単位の金が動くなら、ソフトに使う金にしたほうがいい。
少なくとも、官主導でハコモノ作ったり移転したりするのは避けるべきじゃないか。
だってもう、いいだけ失敗したろうが。
WTCATC、三セクのフェスティバルゲート……ちっとも上手くいっとらんやん。


バブルに踊って、杜撰な計画のもとに使えないものを作った、それを府が買ってやってもいいよと言ったから渡りに舟でお願いします、というのはちと情けなかないか。
すでに計画倒れで行き当たりばったりなのに、ここから都市計画をスタートさせますと意気込まれても誰が信用するだろう。
大阪を活性化させる、そういうビジョンを考えるなら、市内から始めるべきではないか。


京阪の中之島線の利用がいまひとつだという。
中之島線の不振は、京都から大阪へやってくる観光客が少ないということだ。
だが一方で、阪神なんば線は好調という。手放しでは喜べない。なんばで降りる客もいくらかはいるのだろうが、素通りされている可能性は高い。奈良から神戸へ一本で行けるのが受けたということらしいから。


もうひとつ。
政令指定市の首長が府議会に来るのは、とてつもなく大きなこと」という感覚がおかしい。
大きな一歩とアピールしたい、そういう狙いからの発言かもしれないが、こんなことが過大に評価されることがおかしい。
なぜなら、私は大阪市民であると同時に大阪府民でもあるからだ。
当たり前のことを、と思われるだろうか。
大阪ではこれが当たり前でない。


府と市が協調態勢を取ろうとしない、という事態がずっとつづいてきた。
大阪市政令指定都市であり、行政上、府と同格だという。だから市と府は折り合いが悪いのだと。
そんなことが、その場で生活している人間にとって何の関係があるだろう。
市と府の利益が相反する場合といわれても、ふたつが重なるところに居住している人間にとっては、それがどないしんたん? としか思えない。
市が赤字の施設を造ってしもた、それを府に買うてもらお。
市・府両方の納税者からすれば、それ、同じ財布なんスけど? ってことだ。
もちろん大阪府民ではあるけれど、大阪市民ではないという人は多い。だが、大阪市民であって大阪府民ではないという人間は、ほとんどいない。


平松市長は、

過去の臨海部の街づくりで「硬直して融通の利かない(市の)組織特有の問題があった」と反省の姿勢

を示したというが、それはどう改善されたのか?

「府・市・経済界による関西活性化の取り組みの象徴」

(として、移転がぜひとも必要)と平松市長はいうが、そこに「住民」が抜けているのが大いに気になる。


これは本気で思うのだけれど、府庁舎がボロボロだというのなら、市庁舎と一緒にすればいいんじゃないのか。


淀屋橋の豪華な庁舎、あれを市だけで使ってるなんてもったいない。
人が溢れようがかまわない。
かえって、いいと思う。
活気が出るというもんじゃないか。
いっぺん同じ所帯で、膝突き合わせて、唾飛ばして汗流して、大阪のことを考えたらいい。
それが住民感情としてはいちばん真っ当な解決策だと思う。
人の信任を受けて、人の金使ってまつりごとやっといて、なに仲違いしとんねん、と。


大阪府から大阪市が独立して110年。
いつまでも分かれている必要がいまあるのか。また一緒になったらいいのだ。
平成の大合併とやらを断行すべきは、過疎の村ではなく、ここじゃないのか。
大阪市・府合併策という大事業。
後世に名を残したいという名誉欲だけではとても務まるものじゃない。
だが男子たるもの女子たるもの、後半生を賭ける価値はあるんじゃないか。


大阪市立大と大阪府立大が分かれてるのは無駄だ、一緒にすればいい、という意見があった。
あの単純な−−いや、礼儀上、シンプルな、と呼ぼうか−−発想を、行政機構に適用してはどうか。


……と、ここまで書いて、「大阪市 大阪府 合併」で検索してみたら、相当数のヒットがあった。
同じ事を考えていた人は以前からいっぱいいたんだな。


東京都の存在を念頭に置いている意見も多い。
東京都は、太平洋戦争下の1943年、東京府東京市を合併して東京都としたもの。
戦時における緊急措置に近いニュアンスで行われた施策が、戦後も継続されている。
しかし、指揮系統がふたつに分かれていることの弊害などを解消するには一案だろう。
大阪府の南北問題も解決できるかもしれない。
このまま「WTCに中枢部を!」なんてかけ声に載せられてたら、梅田まで新幹線を引き込めずに造ってしまった「新大阪」と同じことになりかねない。
誰が宮原に新幹線の駅を造りたがったのやら本当のところは知らないが、少なくとも経済界がいう大阪の活性化なんてものは、あの時点ですでに失敗しているのだ。


私は、大阪市大阪府をいますぐ全面的に合併すべしである、と強弁するわけではない。
さっき思いついた話だもの。


ただ、庁舎移転の話が出ているいま、両者の在り方を考えるいい機会だと思うのだ。
だから、まずは同じ場所で、お互いの仕事をそれぞれやってみたらどうかと提案するのである。
結果、「あ、別に分かれてやる必要ないやん、これ」と思えば、一緒にやっていく方向に舵を切っていく、と。
どうしても分けないと上手くいかんということがあれば、それは分室として外に場所を借りればいい。
これは、それほどとんでもないアイデアだろうか。


繰り返しになるが、もう一度。
住民感情としては、そう突飛な発想とは思っていないよ。


メジャー紙には、なぜこういう意見が載ってないんだろう。