●会話のマジック
レイティング終了ということで、職場の白色蛍光灯のもとで健康的に軽く打ち上げ……のはずが、解散は朝7時。
どろろろと眠り、ぐるるると起き、午後には再び職場へ。
「髭(HiGE)/須藤寿氏」インタビューの台本の準備をする。
夕方から収録開始。
先日の松尾スズキ氏のコメント収録とちがって、今日は、ちゃんと聴き手のDJがいる収録である。
聴き手のDJというのは、ちわきまゆみ嬢。
指折り数えてみれば、私が彼女にキューを振るようになったのは、2002年の4月の改編からだから、もう5年半になる。
その前にライブ収録パートの補佐的ディレクターという時期が少しあったものの、やはりいちばん近いところに立って、一緒に番組を作っていくというのは違うものだ。
いろんな意味で破格な(パターンに収まらない)喋り手/聴き手なので、何年経っても発見がある。
今日の収録も然り。
ラジオのインタビューに関して一般論を述べると、まず、雑誌のインタビューではないので、相手の胸突き八丁に切っ先鋭く質問を浴びせて、というようなことはほとんどない。
その種の攻撃的な聞き出し方というのは、ラジオにはあまり馴染まないように思う。
かといって、ただ相槌を打ったり、相手のいうことをオウムみたいに繰り返していても仕方がない。
喩えるならやっぱり、(インタビュー相手には少々失礼かもしれないが)「釣り」に近いと思う。
糸を垂れて、ぱくりと餌をくわえてくれるのを待ち、くいくい引っぱりながら、ともに波に揺られる。
しかし勝負事ではないから、釣り上げることが本意なわけではない。
ぐだぐだ一緒に揺られていくことの方が重要である。
恐れずに揺られていることができるかどうかが、まず課題だろう。
おのずと「老人と海」みたいな壮絶なことにはならない。
劇的要素には欠けるだろう。
だがようく聞いてみると、なかなかスリリングなこと話してるぞ、と気づくときがある。
ラジオは「ながら文化/ながらメディアだ」といわれるが、それだけではないのだ。
それまで「ながら」で聞いていたリスナーをアクティブに転化する瞬間があるものーーそれは音楽だったり会話だったりモノローグだったりするがーーそういうところにラジオの価値は発揮されるのだと思っている。
ちわきまゆみの会話にはそのマジックがある。
今回の髭(HiGE)/須藤氏へのインタビューも、来月出るニューアルバムのある種の真髄に触れる話が聞けたと思う。
11月10日から3週にわたってオンエアします。
「ひとの話って面白いんだな」
そう思える会話ってものがあるのだ。芸人さんが披露するネタとかじゃなくても。
皆さん、ラジオをよろしく。