●楽園の憂鬱


今日は東京でインタビュー収録。
東京スカパラダイスオーケストラから、沖祐市氏、加藤隆志氏、茂木欣一氏を迎えての取材。
2月に出る14枚目のオリジナルアルバムのキャンペーンである。
アルバムタイトルは『PARADISE BLUE』。


コーラスの目立つ曲やシンガロング・スタイルの楽曲はあるが、基本的にインストゥルメンタル主体の作品。
一聴しただけでは、ひょっとすると地味な印象を受けるかもしれない。
オーセンティックなスカに回帰したともいえる。
だが、これがよい。
全12曲の作品集だが、3〜4曲ごとに表情が変わっていく。
聴き終えると頭からリピートして、あたかも四季を巡るがごとく、何度でも彼らの世界に耽溺できる。
(終盤のデニス・ボーヴェルによるダビーなワールドも最高。北原氏による「カルナバル」ヤバい!クール!)
レコードデビュー20年目なればこその、良品である。


その辺りのことを、ギター加藤氏が端的に語ってくれた。
「(冷牟田さんが抜けて)9人になった東京スカパラダイスオーケストラの音を早く届けたかった」
「それはつまり、“9人の音”というものを早く形にしたかったということ」
「最高傑作が出来たと思ってる」
その言葉にたがわぬ、聴けば聴くほど味の滲み出てくる一作。
Paradise、だけどBlue。
Blue、だけどParadise。
相反する要素を同時に抱え込む、大人ならではの力業が冴えている。
PARADISE BLUE


そしてもうひとつ、今月中旬にリリースされる沖祐市氏のソロアルバム、『ひつじさんとわたし』。
これがまた素晴らしい。
自宅のアップライトピアノでの演奏をご自身で録音されたとのこと。
それがまた、リラックスしつつも緊張感を孕んでいて、なんともいえない滋養に満ちた音である。
沖さんが弾く、ラヴェルの「死せる王女のためのパヴァーヌ」、じんわりとしびれる。
ラストを飾る、ピアノバージョンでの「睡蓮の舟」(シングル「美しく燃える森」のカップリング曲)も肋骨に沁みる。
ひつじさんとわたし