●君はまだハタチ


この正月の話題といえば、ひとつにUNICORNの再結成がある。
元旦に謎のサイトが立ち上がり、謎の年賀状が送られてきた。


どうやら限りなく本格的に、限りなく遊びモードで復活を遂げるようで、すでにシングル、アルバムのレコーディングを終えていることも明らかになった。
ツアースケジュールも発表になった。
横アリ、スーパーアリーナ、武道館、城ホールなどなども含む全国31公演。
バンドブーム最後の大物の復活である。これはどちらさまもぜひ賑々しく盛り上がっていただきたい。


オフィシャルサイトには、「感じ悪くてすいません![世代別]思い出の“あの曲”ランキング」なるコーナーもある。
エピソードとともに思い出の曲を一曲挙げて投票するという運びなわけだが、タイトルどおり、これが世代別に分かれている。
「アラフォー・アラサーの方はコチラ」「若者はコチラ」と、二通りの道が用意されている。
かつてのユニコーンファンも、そうか、30だか40だか、か。


となると、折しも成人の日の前のこの時期、思い出すのはこの曲である。


この曲「服部」を、新成人たちに送りたいと、毎年この時期になると番組の選曲に入れる先輩ディレクターがいた。
なにしろ「君はまだハタチ」「粋も甘いも 知り尽くすには 10年早い」「お家に帰って泣いてろ」である。
「大人の恋なら キャリアが必要」「男の憧れ 憂いのダーティー・サーティー」なんである。
洒落が利いとる(利きすぎという話もある)。


ま、かようにハタチというのは不自由なものだった。
私も早いとこ、憂いのダーティー・サーティーになりたかった。
が、実際なってみると、サーティーはまだまだ清らかなもんで、フォーティーだって大したことなくて、やっぱりホントにワルくなるにはフィフティーくらいは行かなくちゃなという感じであるが。


何が言いたいかというと、「まだハタチ」というのは言われて嬉しいフレーズじゃないよなあ、ということなのである。
少なくとも自分から「まだハタチ」とアピールするなんてことは、私の価値基準からいって、あんまりない。
「ハタチ」と言う発語主体の大半は、「まだ」ではなく「もう」と言いたがるもんだと思うのである。


「もうハタチっすから(酒も呑めます、煙草も吸えます)」とか「いい加減、もうハタチっすから(暴走りとか卒業っす)」というような具合に。


そうではなくて、「まだハタチ」と言明するのにはどんな場合があるかを考えてみたが、あまり思い浮かばない。
「まだハタチ(ですから、見逃してもらえませんか)」というエクスキューズ。
エロおやじに「君いくつ? オトナっぽく見えるねー」とかいわれて、「えー、やだー、まだハタチですぅ(ぁんだとぉ? ざけんじゃねえよ、オッサン)」とやんわり言い返すとき。
せいぜいそんな場合に限られているのではないだろうか。


かような次第で、自分から「まだハタチです」と言ってまわっている人間というのを私はうまく想像できない。
まだハタチだからってなにを大目に見てもらえるわけでなし。
売りにするほどハツラツと若いわけでもなし。
だったら「もうハタチ」なんだから、さっさと大人になろうぜ。
そう思うだけである。
この一年、何度もそう思うのだろう。


正月、いかしたバンド復活の報せから、そんなことを考えた。