●どこにでもいる、ありふれていない人々


ありふれた奇跡』、第2回。
脇の登場人物たちの性格づけも徐々に明らかになってきた。


田崎重夫(風間杜夫)が、なにかしらひとネタ小話めいたことを話したがるという設定とか。
いかにも職人の親方風の田崎四郎(井川比佐志)だが、一面、ひとの心の動きにもよく気を配る人物である、とか。
中城静江(八千草薫)の、ふわふわとした少女性のなかに時折ピシリと混ざる現実認識(息子の嫁に対する自身の感情の分析)とか。
その嫁、中城桂(戸田恵子)の、娘に対する距離の取り方とか。


どれもぞくっとするリアリティがあって、いい。
類型をなぞるだけで済ませているそこらのキャラクター造形とはなにもかも違う。
なかでも今回、ぎらりと光ったのが、田崎翔太(加瀬亮)の兄貴分にあたる左官職人、神戸幸作(松重豊)。

  現場からの帰りの車内。
  信号待ちのあいだの会話。


翔太「カンベさん」
神戸「ん?」
翔太「世の中、なんにもないと息苦しいけど、あればあったで面倒なもんですね」
神戸「なに云ってやがる」
翔太「ふふ。ほんと」
神戸「−−北海道は遠くてどうしようもねえよ」
翔太「六歳と三歳の娘さんでしたよね」
神戸「出稼ぎしなきゃ、一家で凍えちまう」
翔太「歳取ってからの子は、かわいいんでしょうね」


  間、あって。


神戸「(翔太のほうを見て)歳なんか取ってねえよ」


  前に向き直り、車を出す神戸。
  軽くうつむく翔太。


いい。しびれる。
神戸幸作……『ふぞろいの林檎たち』で小林薫が演じた仲手川耕一の再来を思わせる。


中城加奈(仲間由紀恵)と藤本誠(陣内孝則)の「普通」をめぐる会話−−普通じゃないところもいっぱいある。それが、普通です−−も、よかった。


この先どうなるか(来週は、なにやら動きがありそう)もさることながら、ただ、こういった会話を横で聞いているような一時間を過ごすこと、それがすでに心地よいのである。