●「淫・呪・艶・賭」


ちょっと引っかかる記事があった。
淫・呪・艶・賭は「学校現場に不適切」
ま、そりゃそうかという気もする。
ここに挙げられてる4つの漢字に象徴されるようなことを学校教育から学ぼうとは誰も思ってないだろう。
公の教育機関では教えてくれないことだから興味を持つってところもあるだろうし。
(中坊が使ってる辞書見たら、性関係のあらゆる単語にライン引いてあるぜ、みたいな)
そういうものを教育現場が避けるのは致し方ないと思うのだ。
そんなことまでセンセイに教えてもらおうと考えるほうが間違ってるだろう。


ただ、現実に漢字としてこれらの言葉が存在している、ということはある。
これらの言葉によって表される心性を人が有している、という事実は残る。
これらダークサイドな人の業を受け持つ部分が、いまの世間では弱ってるというか、不自然に遠いところに追いやられて隠されているような気はする。


……と思ったのだけれども、でもな、そういう批判−−デオドラントな消臭社会、的な批判−−はよく為されていることだよな。
なにをいまさらってところはあるよな。
そういう気がした。


なので、ここは一歩踏み込んだ提案をすることにしよう。


これらの漢字を、積極的に学校で教えることにする、というのはどうだろう。
そのおかげで、国語教育に関心を持たなくなってしまった世代や層に訴えることができるかも、と思うからである。


たとえば、「淫」。
これを顔グロコギャルチョベリグ世代(って、そんなのもういないのか?)風に翻訳するとどうか。
ずばりだが、「スケベ」「えっち」「やり×ん」「やりち×」というところだろうか。
(ヘンなスパム・トラックバックばかり集まっても困るので、一部伏字にしております)


つづいて、「呪」。
これはあれだろう、Hip-Hopライム詠みたちの用語から派生して一般レベルに浸透しつつあるアレ。
「disる」が当てはまるじゃないか。


では、「艶」はどうか。
これも淫に近い系だが、性に関するアティテュードとして、より積極的なニュアンスがにじんでいる語であるからして「エロカワ」の訳語とする。


そして。「賭」。
単にギャンブルという意味だけでは、いかにもおじさん風の語に留まるだろう。
もう少し、イケメンホスト路線に寄せて、能動的に解釈することにしよう。
「マジやる気」の訳語として理解するのはどうだろう。
「センパイ、この仕事、オレ、マジやる気っす」=「先輩、オレ、この仕事に賭けてるんです」


あるいは、「タマあずける」とかいうのもいいかもしんない。
「オレにタマあずけっ気あるか?」=「オレに賭けてみないか?」


こう考えてゆくと、けっこうな数の若者言葉は漢字に変換・翻訳することができるような気がする。
そのためには、学校現場が忌避する傾向にあるこれらの漢字「淫・呪・艶・賭」などを、常用漢字から削除するのは得策とはいえない。


漢字を使って、携帯メール世代にアピールだ。
学校の屋上で、コンビニの前の路上で、塾行く途中の乗換駅で、バイト先の裏口にある非常階段で、日夜メールを打ち続けている孤独な魂たちを救うのだ。
彼らの豊かなボキャブラリーを、漢字に再変換するのだ。


いつかは「一文字でキモチあらわせるってシブい」「漢字って、イカすじゃーん」「なんたってカンジだもん。響きがいいよねー」「オジサン、まだ絵文字とか使ってんの?」とかいう事態を招き寄せることができるかもしれない。


文化審議会のみなさま、いかがでしょう。