●年号たち


小熊英二の『1968』(上)をぼちぼちと読んでいる。
1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景


1000ページ以上ある。
机上版の広辞苑を少し小ぶりにしたくらいの大きさ。
重さを量ろうとキッチンスケールに載せたらエラーが出た。
体重計でざっくりみてみると、1.4キロあった。


しかしこれが、7月14日の時点ではジュンク堂・堂島店のビジネス・ノンフィクション書ランキングで堂々15位にランクインしていたのである。
いったい、どういうひとが買って行っているのか。
自分のことは棚に上げて、気になる。
やはり「自分大好き」団塊の世代の諸先輩がたが多いのだろうか。


これと同時期に出ていたのが、山本直樹の『レッド』(3)。
レッド(3) (KCデラックス)


で、先々月貪るように読んでいたのが、これ。
1Q84 BOOK 1


ふと気になったので、順に並べてみた。
たまたま部屋で目についた、他のものも一緒に。


具体的には1965年1月の慶大闘争から記述が始まる『1968』。
下巻では、その後の70年代の連合赤軍ウーマンリブ闘争までが射程に収められているようだ。


そこに重なるのが、その名のとおり、連合赤軍を追った『レッド』である。
きちんと副題に「1969〜1972」と記されている。
3巻で描かれるのは、1971年5月・6月という嵐の前の静けさ的な時期。
彼らはついに山へ入ることを決め、実行に移す。


そしてそのあと。
楔を打ち込むかのように、あさま山荘事件の翌年の年号を冠しているのが、村上春樹の『1973年のピンボール』。
こうして並べてみると、やはりオシャレな都会派小説などではないということがわかると思う。


このあとには、できればクラッシュのシングル「1977」を置きたかった。
Super Black Market Clash


そして『1Q84』をはさんで、右端の少し遠くにみえるのは、雑誌「HB」に掲載されている秀逸なコラム「hatchback '95」。
1995年もまた、特筆すべき年号だった。
そうだ、音楽でいえば、HEATWAVEのアルバム『1995』があった。
1995


橋本治の『89』も忘れちゃなんねえ。


年号というのは、思いのほか多くを物語る。
その後でいえば、個人的にも、1991、1993、1998、2001、2003というあたりは忘れられない年である。
そしてまちがいなく、2009年もそうなる。


   *   *   *


脇道に逸れたが『1968』。
時間さえあればグッと集中して一気に読み込みたい本である。
小説ではないから、読み耽るとしても、それなりにクールな頭であの時代を追っていけると思う。
だが、読みやすい文体で淡々と記述が進んでいくところが、かえって効くという気もする。
それだけの深みがある。
放っておかれたら−−腕力のつづくかぎり−−ずっと読んでいるだろう。


ともかく私の頭のなかは、このところ1965年から1975年のあいだを行ったり来たりしている。
1975年の話は、また今度。