●とかく川上に向かう日々である


papyrus』という雑誌を買った。
宮本浩次×川上未映子」の対談目当てである。
なんだか「川上未映子」という文字があればなんでも手にしている気がする。


さて対談で宮本が言っていること。

「しかしね……僕は、川上さんの小説を読んで、非常に女性の感覚なんだけど、脳はとても男性的な感じがいたしました。(中略)女性的な感覚を言語化できてしまうことが、非常に男性的だと思いました。」

このくだりに大いに合点がいった。
そうなのだ。
題材は豊胸と生理であれ、おんなおんなした感覚ばかりで押し切ったりしていない。
私が川上未映子の文章に惹かれる理由のひとつは、たぶん、言葉にするときの姿勢が曖昧でないからだ。


ところで、この雑誌、出しているのは幻冬舎
以前の月刊カドカワの判型を大きくしたような感じ。
もともと月カドを作っていたスタッフが流れていったのが幻冬舎なんだっけ。
表紙の鬼束ちひろ特集につけられたキャッチ「私はまだ死んではいない」は少々扇情的で、この辺が月カドに通じるところでもある。


とはいえ、ほかの記事も意外と愉しめた。


サンボマスター山口隆箭内道彦の対談も良かったけれど、特に秀逸だったのは、『エレカシ限定カラオケ大会』。
リアリズムの宿』『リンダ リンダ リンダ』『天然コケッコー』等々の映画監督・山下敦弘や、男前スタイリスト伊賀大介ら5名+編集長という男どもがカラオケボックスにこもり、エレファントカシマシの曲オンリー、5時間にわたって歌い続けるという企画。
掲載されている「この日、捧げられた曲一覧」リストを見ているだけで笑える。


あと、大宮エリーキョンキョンのことを書いてるエッセイがよかったな。
これはこれで、なんだか女同士の友情だ。
キリッとしてるけど細やかなところまで気の行き届いたこの感じ。
野郎同士じゃこうはいかない。




papyrus (パピルス) 2008年 04月号 [雑誌]





内容とは別に、気になったことがあった。
全体にひとつひとつのテキストのサイズが、いささかコンパクトにまとめられすぎているように感じたのだ。
まあ私が読みたかった「宮本×川上」対談などの記事を読んでると、「あれ、もう終わり?」くらいに感じられてしまったせいなのだが。
あるいはそれは編集技量が優れている証拠なのかもしれないし(まだ続くのかよって思わせるよりはいいはず)。
編集長氏入魂の(と思われる)Coccoのインタビューは、かなりの分量だったりするから、熱は感じるのだ。
だからそれは、俺が「これくらいは必要」と思ってる、「そのコンテンツがおのずと要求してくるサイズ」というのが、この雑誌などにおけるジャッジと違っているのかもしれない、という問題。
もともとクドい性格だからなあ。